2025年・78回カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞したイランの巨匠・ジャファル・パナヒ監督のサスペンススリラー作品です。不当に刑務所に投獄された庶民階級の人々が復讐を試みる有り様を、スリリングに描写しながらユーモラスに描く作品です。
かつて不当な理由で投獄されたワヒド(ワヒド・モバシェリ)の勤める自動車修理工場に、自分を拷問した看守と思われる男が、野良犬をはねて故障したとやってくる。ワヒドは彼の足音で気がつく。目隠しされた身で顔は分からないが、義足の足音で刑務所で自分を拷問した看守エクバル(エブラヒム・アジジ)の足音と確信する。その車には臨月近い妻と幼女が乗っていた。自宅を突き止めたワヒドは、義足のエクバルを拉致、砂漠地帯で穴を掘り、生き埋めにしようとするが、男は『人違いだ。私の義足は、去年の事故で脚を失ったものだ』と訴える。ワヒドは迷う。拷問中に目隠しされ、看守の顔は見ていないのだ。ワヒドは、ひとまず復讐を中断し、初老の書店主、女性写真家、彼女と同房だった女性とその花婿を訪ねまわるが、全員が目隠しされて拷問されていたので顔はわからない。思い余ってすぐ切れる性格の女性写真家の元・カレを訪ねる全員。彼だけが義足のエクバルの脚に触れたことがあったのだ。彼は『間違いない、ヤツだ』と断言する。だが、家を訪ねると幼女が『ママが倒れた助けて』と懇願される。慌てた全員で病院に連れて行くと臨月の妻が産気づいている。仇の全員の努力でエクバルの妻は出産して男の子が生まれる。それでもワヒドたちの復讐の心は折れないが・・・。こんなワヒドたちのあれやこれやの騒動で復讐は実るのか・・・。
反体制的な活動を理由に、イラン政府から映画製作を禁じられながら活動をつづけるジャファル・パナヒ監督が、自身が2度にわたる投獄された経験と、監獄で出会った人々のリアルな声から着想を得て作られたこの作品は、今作で3大映画祭すべてで最高賞を受賞する快挙を成し遂げたメモリアルな作品なのです。ラストの余韻に、人間性について深く考えさせられる作品でした。人づての情報では、受賞後イランに戻ったと言われるが、監督の行方は分からないらしい。
ぼくのチケット代は、2300円出してもいい作品でした。
星印は、4ッ差し上げます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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