ヒーローや怪獣などのスーツや着ぐるみをつけて難易度の高いアクションを演じる、縁の下の力持ち的存在である俳優たちを<スーツアクター>と呼称するが、この作品はそんな高い特殊技能を持ちながら名もなき俳優たちの日々精進する姿を描いた作品である。
本城渉はブルース・リーに憧れて映画界に身を投じたが、25年過ぎた今も<スーツアクター>のままであった。この世界では名を知られた存在であり、真面目な性格と高いアクション技術は映画スタッフから認められていたが、チャンスをつかみ損ねてもう中年になろうとしているのに便利屋のスーツアクターのままであった。薬局を営む妻・懍子との間に中学生の娘・歩がいるが3年前に別れていた。そんな本城にスーツアクターでない出演の打診を受け、喜んだのも束の間、その役は新人アイドル・一ノ瀬リョウにプロデューサーの意向で奪われガッカリしてしまう。しかもアクションの技術もない小生意気なリョウの指導を頼まれた本城は、リョウを一人前のアクション俳優に育てようとするがリョウは上の空。しかし、真面目な本城は懸命にリョウを指導する。そんな本城の態度にリョウも次第に心を開いていく。実はリョウは幼い弟と妹を育てていた。母親から捨てられ兄弟妹3人で暮らしていたリョウは、ハリウッドで俳優として成功しアメリカに行った母と再会したいという望みがあったのだ。そのためハリウッド映画のオーディションを受けていた。その作品が日本の忍者役なのでアクションが出来なければならない。それが本城の役を奪った原因と知った本城は、身を入れてリョウを鍛えていく。しかし、その作品の監督はCGもワイヤーも使わずに危険なアクションを撮ろうとして有名なアクション監督が下りてしまう事態となり、中止の指令がハリウッドから来る。本城はリョウの相棒役の命の危険もあるスタント役を承知し、撮影が続行されることとなる。長いスーツアクターの演技で、もう中年の体がガタガタの本城に、この超難易度の高いスタントアクションは果たして出来るのか、本城の仲間や懍子、そしてリョウが固唾を飲んで見守る中、本城の一世一代の演技ははじまった・・・。
映画界の縁の下を支える名も無き俳優たちの精進を描いた作品は、唐沢をはじめスーツアクターを演じる俳優たちの体を張った演技は好感を持てるものの、いかんせん脚本がかなり雑なので余分な描写が多く、肝心のスーツアクターたちの情熱、心意気が空回りしてしまっている感がある作品となってしまった。ラストの唐沢のワンシーンで100人を倒すという撮影シーンは結構迫力があっただけに残念である。
ぼくのチケット代は、1,900円を出してもいいと思う作品でした。
星印は、2つ半差し上げます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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