『まほろ駅前多田便利軒』(2011)を見た時、この作品がシリーズ物になって欲しいと思っていたのだが間にTVシリーズが入って人気を取り(これは三浦しをん原作『まほろ駅前番外地』の短編集をかなりアレンジしたものらしいが、テレビ東京なので大分では放映なしという事で残念ながらぼくは見られなかったけど、原作では読んでいる)再び三浦さんのシリーズ第3作が、映画ではシリーズ第2作目として(ああ、ややこしい!)封切られることとなり、ワクワクした気分で見た。今回は終盤が1作目よりも派手になっているが、瑛太の多田役と松田龍平の行天役とのゆる~い関係は健在で楽しく見ることが出来た。
さて、今回の内容は、行天の幼い娘・はる(1作目を見てない方に少し説明すると、行天が薬品会社のプロパーをしている時、女性医師・三峯凪子に頼まれ自分の精子を提供して出来た子)を凪子がアメリカで論文執筆のため一か月半預かることになってしまう間の出来事を中心に展開する。行天は小さい頃、母からDVを受けたことから精神が屈折し子供ぎらいとなっており、ましてや精子提供で出来た子を預かるとなると、どうゆうことになるやも分からず、多田は凪子の娘とは行天に告白出来ずヘドモドしながら何とか行天をごまかしながら三人で生活する様をユーモアあふれる描写で措きながら、それに振興宗教の影が見え隠れする訳ありの健康食品の話し、そこに食い込もうとするヤクザの動き、頭のキレる裏社会に通じる自称実業家・星の企み、バスの間引き運転を疑う多田便利軒のお得意様の頑固な老人・岡が巻き起こす突飛な事件などを織り込みながら奇想天外なクライマックスへと突き進んでいく話しとなっている。
東京に程近い架空の町まほろを舞台に、そこに住む庶民の生活を措きながら、何でも屋の多田便利軒の周辺だけはまるで異世界のような不思議な出来事が起こり、そこだけがハードボイルドな世界となり、必然的に多田と行天は平凡な日常生活とハードボイルドな世界を行き来せざるを得ない様子を、ある時はユーモラスに、ある時は辛辣な描写で描くこの作品は、今まで見た事のないユニークな内容となっているである。
三浦しをんの小説もたいへん面白いのだが、瑛太と松田龍平という絶妙なコンビの配役により、視覚的に小説に匹敵する出来栄えの映画となっているのがうれしい!
今回の作品は、一作目よりもケレン味が強いクライマックスとなっているが、この正に適役と思われる二人が活躍するシリーズを是非つづけて欲しい作品となっているのだ!
ぼくのチケット代は、2400円出してもいいと思う作品となっています。
星印は、4つ差し上げたい作品となっています。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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