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天才スピヴェット

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   2014/12/23

衛藤賢史のシネマ教室

『アメリ』(01)で日本中のファンを魅了したJ=P・ジュネの最新作。61才になった今でもみずみずしい感性あふれる才能を堅持する精神の柔軟性に脱帽したくなる作品となっている。
今回の舞台はアメリカ。モンタナ州の大草原が広がるパイオニア山地にある牧場に住むスピヴェット少年は、生粋のカウボーイ気質の父と昆虫博士の母、女優になることが夢の姉、そして双子の弟と暮らしていた。弟のレイトンは父譲りのワイルドな性格で家族の期待の星。それに比べてスピヴェットは母譲りの体質で科学の研究に没頭する、いわばオタク少年だった。てんでバラバラの性格の家族だがレイトンが牧場の仕事を継ぐことが暗黙の了解のもと、一家は均衡を保っている。そのレイトンが事故でなくなってしまった。扇の要が壊れたように家族の心はバラバラになる。10才にして科学の天才であるスピヴェットは、このような大自然の中に暮らす家族には何の役にも立たないゴクつぶしにすぎないのだ。父に愛されていないと感じるスピヴェットの心はさびしい。そんなスピヴェットにある日、科学の殿堂であるスミソニアン博物館から電話がかかる。スピヴェットが発明した何のエネルギーもいらず永久にまわり続ける<磁気車輪>が科学者にとって夢であるベアード賞を受賞したので博物館での授賞式でスピーチをしてほしいというのだ!10才という年齢では冗談と思われかねないので、とっさに父の発明ということにしたスピヴェットだが、家族内の不協和音の中にひとり置き去りにされていたスピヴェットは、家族に黙って授賞式に参加するため家出をすることを決心する。
さあ果たして、スピヴェットはスミソニアンにたどり着くことが出来るのか?10才の天才少年スピヴェットのなが~いアメリカ大陸横断の旅がはじまった・・・。
J=P・ジュネが寄り添うように展開する大陸横断の旅のシュールでキュートな撮影は、カラフルな絵本とマンガと具体的描写が渾然と入りまじり夢のように楽しい内容となっており、その中に純粋さを失った大人社会への辛辣な風刺がぎっしりと詰まる。知的でありながらアソビ心満載のこの作品は、同時に現代社会への異種への偏見が世界を混乱させているのではないか?という寓意的伝達を込めているのではないか!ということを考えさせられる内容ともなっているのだ。
ぼくのチケット代は、2,100円を出してもいい作品でした。
星印は、4つ差し上げます。

5点満点中4点 2100円

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