戦前カナダに移民した日本人二世の若者たちによって誕生した野球チーム<バンクーバー朝日>の選手たちの活躍と移民生活の苦闘を描いた作品である。
カナダ・バンクーバー。そこには日本人たちによって形成された日本人街があった。製材所、漁業、ホテルの従業員など安い賃金に文句も言わず懸命に働く日本人たち。白人からジャップと言う呼称で侮蔑的扱いを受けながらきつい労働に耐え、お互いに身を寄せ合うように生活していた。
そんな劣悪な環境の中で、二世の若者たちは野球チームを作り頑張っていた。だがきつい労働のあと疲れた体で野球の練習をする上に、屈強な体つきの白人チームと渡り合うチームは連戦連敗の有様であったが、そんな<バンクーバー朝日>であっても、日本人街の住民にとって精神の癒しの存在でもあった。だが昭和10年代の日本は中国大陸で戦闘状態にあり、カナダ国民の冷ややかな眼がカナダに移住した日本人にもそそがれていた。そんな時、チームのキャプテンに指名されたレジー笠原は日本人街の住民たちの期待に応える作戦を考えつく。それは器用な技術バント作戦であった。小柄な日本人にとってバントで大味な野球をする白人たちの守備を乱す作戦であり、この作戦によって<バンクーバー朝日>は連戦連勝のチームに変貌した。日本人街の住民は熱狂してチームを応援し日頃のウサを晴らした。ついにリーグの優勝戦に駒を進めたチームに、冷たい眼をそそいでいた白人たちの中にも応援する朝日も現れはじめた。そしてチームは見事に優勝する!しかし戦局は次第に激化しカナダの日本人たちは敵性外国人として収容所に送られることになるのだった。
大がかりな野外セットを組んだバンクーバーの日本人街を中心に展開するこの作品は、実際に存在した<バンクーバー朝日>のチームの面々と日本人街の住民のバンクーバーでの苦しい生活ぶりを丁寧に描写していく。カナダ人としてカナダに同化しようと頑張る二世たちの気持ちと、カナダへの出稼ぎ根性の消えない一世たちのカナダと日本との間で揺れ動く気持ちを織り交ぜながら、それぞれの移民たちの気持ちの葛藤を描こうとしているが、野球と移民の生活という二つの軸足を同時に見せようとしたことによって少し平板な内容となってしまった。作品の質は悪くないのだが、野球・移民生活と二つを淡々と描いたような印象を受ける作品となっているのだ。
ぼくのチケット代は、2000円を出したい作品でした。
星印は3つ差し上げます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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