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幸せのありか

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   2015/02/10

衛藤賢史のシネマ教室

2013年のモントリオール世界映画祭でグランプリを獲得したポーランド映画であり、脳性麻樺の主人公マテウシュの少年時代を演じたカミル・トチカ、青年期を演じたダヴィド・オグロドニクの迫真の演技に世界中が驚嘆した話題作でもある。
1980年代、ポーランドにワレサなどの卓越した指導者が現れ、社会主義から民主化への運動がはじまった頃、マテウシュは磊落な父親と優しい母親との間に生まれた。
末子として祝福されて誕生したマテウシュだったが、脳性麻痺という重度の障害を持つ子であった。医師の診断では頭脳の発達も見込めない<植物状態>なので療養所に入れた方がいいと助言されたが、マテウシュを深く愛する両親は普通の子供と同じように家で暮らさせることにする。が、それは医師の見立て違いであり、マテウシュの知能は健常者と同じであり、父親の夜空の星の話しに感銘し、母親の深い愛情を理解できる子であったのだ。しかし重度の障害でその気持ちを現す言語能力、身体能力がないため感情表現が出来なかった。やがて父親が死に、母親が老いた成年期にマテウシュは知的障害者の施設に入れられる。少年時代の淡い初恋、父親の男としての感情表現、母親の滋しみなどを胸に秘めたままのマテウシュにとって、施設での考える力のない者としての義務的補助の生活は悲しいものであった。しかし施設にボランティアとして来た富裕な家庭の若い娘マグダはマテウシュを人間として扱ってくれ生きていく希望を与えてくれる。
だが、それもマグダの家庭内のきしみの捌け口としての感情をマテウシュにぶっつけたに過ぎなかったのだ。失恋の深い感情の喪失感、そんな時、まなざしの回数で専用の冊子での単語を選び、自分の意思を伝える方法を会得したマテウシュは、生まれてはじめて自分の気持ちを表現するのだが・・・・。
マチェイ・ピュブシツア監督が実際の出来事にインスパイアされて作ったこの作品は、聡明な頭脳を持ちながら重度の障害で自分の意思をまったく伝えられない人間の苦しさ、悲しさを措きながら、脳内のマテウシュのよどみない言葉をモノローグ(独白)で伝える手法により、人間という考える能力を持つ生物の<精神の尊厳>を鮮明に謳い上げる。そしてこの困難な役を見事に表現し得たダヴィド・オグロドニク(成年期)カミル・トカチ(少年時代)の演技はこの作品を光輝かせた!
ぽくのチケット代は、2,300円を出してもいい作品でした。
星印は、4ッ半さしあげます。

5点満点中4.5点 2300円

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