韓国映画史上で歴代2位の観客動員数を記録した娯楽感動大作が登場した。
近くて遠い国と言われる韓国の現代史は、日本人にとってあまり詳しく知らない人が多いのではないかと思うが、この作品を見れば大いに泣き笑いしながら二次大戦以降の変転極まりない韓国の歴史的流れを知ると同時に、過酷な状況に屈せぬ庶民のヴァイタリティあふれる生き方に拍手を送りたくなるだろう。
1945年に勃発した朝鮮戦争時、まだ年端もいかなかったドスクは、興南撤収作戦で親子6人で米軍の船に乗ろうとした際、背中に背負った妹を混乱の中、岸壁に振り落とされてしまう。そして妹を救うため船を降りた父と共に行方不明になってしまう。父は船を降りる際、ガンスに釜山にいる妹が営む家を頼るよう指示し「もし父が行けなければ長男であるお前が家族の面倒を見るように」と後事を託す。釜山に避難民として着いた母と三人の子は、父の妹の家に身を寄せて暮らすことになる。父の言葉で長男としての責任を一身に背負ったガンスは、貧しい生活の中を苦労して内職をする母を助けるため少年の頃から働きはじめる。そして兵役を済ませた後、ソウル大学に合格した弟の学費と一家の家計を支えるため進学を諦め、西ドイツの炭坑への出稼ぎに母の反対を押し切り応募し、少年時代からの親友と共に西ドイツに赴く。高額の賃金を貰う炭坑夫の仕事は想像を絶する厳しい仕事だったが仲間と共に頑張る。そこでガンスは看護婦として働く美しい娘ヨンジャと知り合い恋に落ちるが、落盤事故で怪我を負い釜山に戻る。しかし帰国したヨンジャが釜山に尋ねて来てガンスと結婚することになり、人生ではじめて楽しい生活を得る。だが妹の結婚費用と叔母の<コップンの店>を買い取る費用を稼ぐためガンスはベトナム戦争で民間技術者として働くことになる…。
戦後の復興から現代の韓国の繁栄の時期、幾度となく生死の境を越えながら、家族のために悲しみ苦しみを胸に奥深く抑え込んで、笑顔で前に向かって生きていくガンスの姿は国境を越えて、同じ庶民の姿として共感しながら見ることになる作品である。
この作品は生活水準が成熟した現代の釜山で、ひたすらに父や妹がひょっとしたら帰ってくることを希望しながら、そのよすがとしての国際市場の<コップンの店>を守るガンスとヨンジャの年老いた姿の描写からはじまるが、その店を売ることをしない両親の気持ちを忖度できない子供の様子と重ねることによってよりくっきりと激動の時代を生き抜いた庶民と、それを知らない子供の世代の差の相違が分かる作品であり、そのことも日本人は共感するであろう作品となっている。
ともあれ、大いに泣き笑いしながら楽しめる上質の娯楽作品ともなっているのだ!
ぼくのチケット代は、2400円出してもいい作品でした。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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