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ターナー、光に愛を求めて

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   2015/07/14

衛藤賢史のシネマ教室

イギリス美術界の至宝J・M・ウイリアム・ターナーの晩年25年間を綴ったこの作品は、大分県立美術館の新設企画展『百花繚乱』の目玉作のひとつとして日本ではあまり見る機会のないW・ターナーの絵画2点が展示されている折、まさにタイムリーな時期に公開された映画となっており、美術ファンにとっても映画ファンにとっても19Cにタイムスリップし、光の画家W・ターナーと共に光を求めてイギリスを旅する気分を味わうことになるだろう。
平民出身ながら若くして名声を博したW・ターナーは、結婚もせず常に光を自作のカンバスに焼きつけるために、各地を旅しスケッチをしながら頭の中に光を記憶し、家で制作する生活をつづけている。そのため家では父のターナー・シニアと家政婦のハンナが旅から帰ったW・ターナーがいつでも制作できるようカンバスや油絵の顔料を用意する役割を努めていた。独学で読み書きを覚え知性豊かな父・ターナーに育てられたW・ターナーはロイヤルアカデミーの教授になる。そんな息子を愛する父は縁の下の助手となってW・ターナーを支えたのであった。その父も持病の気管支が悪化しW・ターナーが54才の時に亡くなる。心の底にはやさしい感受性を擁しながら人づきあいの苦手なW・ターナーは孤独の縁に沈み家政婦で愛人のハンナを捨て旅に出る。
そして前に訪れた港町マーゲイトを訪れ夫を亡くしたブース夫人を労わることで自らも慰められ、ブース夫人に心からの愛情を抱くことになる。
しかし、心の平安は取り戻してもW・ターナーの絵画に対する挑戦はより先鋭的となり、女王から「薄汚い絵」と言われ、批評家たちの意見も良否に分かれるほど、めくるめく激しい光の描写に形も消え去る作品へと昇華していった・・・。
私生活もつまびらかでなく、謎の画家と言われたW・ターナーの後半生を、結婚せずに複数の女性と複雑な関係を描写の中心の据えながら、サイドに19C当時のイギリスの画壇の有様を緻密に表現し、その中でのW・ターナーの立ち位置を観客に理解させる手法で彼の他面的性格を解析していくM・リー監督の卓越した作劇によって、小難しい芸術的理論を万人向きに咀嚼して提供する娯楽性を備えた一級の作品となっている。
W・ターナーを演じるT・スポールのパーフェクトな演技も圧巻であったが、W・ターナーの絵画を彷彿させるD・ポープの撮影のすばらしさも、この作品には不可欠の要素をもたらしてくれている。
ぼくのチケット代は、2,400円を出してもいい作品となっています。
星印は、5つ差し上げます。

5点満点中5点 2400円

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