「No Stage No Life!」ステージナビゲーター★飯田裕美です。
1月29日の放送もお聴きくださり、ありがとうございました(^^♪
今回は私の2025年“ミュージカル始め”となった作品【ラブ・ネバー・ダイ】の話題を中心にお話いたしました。
「オペラ座の怪人」から10年後を描いた作品です。
♪簡単なストーリー♪
ファントムがオペラ座から姿を消して10年。彼はニューヨークのコニーアイランド一帯でファンタズマ(見世物小屋)の経営者として財を成していましたが、クリスティーヌへの愛は消えるどころか狂おしいほどに膨らみ続けていました。クリスティーヌはラウルと結婚し一児の母となり、“伝説のソプラニスト”としてオペラ座で活躍していました。しかし、一家の幸せに水を差すラウルのギャンブルで作った多額の借金。この事実を知ったファントムは、謎の興行主を装い、クリスティーヌがファンタズマに出演すれば多額の報酬を払うという話をラウルに持ちかけ、一家はファンタズマにやってくる…
日本上演3回目となります。ファントムとクリスティーヌはトリプルキャストと言う贅沢さです。
日本オリジナルキャストの市村正親さん、平原綾香さんに加え、前回からご出演の石丸幹二さん、前回ではメグジリーを演じ、今回役替えでクリスティーヌとなった笹本玲奈さん、そして、今回が初出演となる、橋本さとしさん、真彩希帆さんの6名。
脇を固めるキャスト陣も本当に豪華な顔触れで、どの組み合わせで鑑賞するか、皆さま非常に悩まれると思います。
【ラブ・ネバー・ダイ】と言えば、豪華絢爛な舞台美術も見どころです。
舞台上でメリーゴーランドが動いたり、3種類の盆が回ったりと立体的で大掛かりな舞台美術は日生劇場でしか上演できないそうです。
また、アンドリュー・ロイド=ウェバーの楽曲の美しさは、前作の「オペラ座の怪人」の楽曲を踏襲しながらも尚麗しく心に響き渡ります。
1月28日に76回目の誕生日を迎えた市村正親さんは、「オペラ座の怪人」・「ラブ・ネバー・ダイ」両作品でファントムを務められている世界でただ一人の役者さんです。
普段の市村さんは、どのカンパニーでもムードメーカーで、場を盛り上げるタイプの方ですが、「ファントムの仮面をつけている時は、ファントム以外にはなれない」と話し、カーテンコールの時も声を発することがありません。それまでに没入する役なんだと思います。
市村ファントムからは哀愁や心が痛み切っている様子がヒシヒシと伝わってきます。ファントムを味わい尽くせるファントムだと思います。石丸幹二さんのファントムはとにかくエレガントです。所作が美しくそれがより一層の怪しさや恐ろしさを抱かせます。自分の中に湧き出てくる怒りを押し沈めようとするのだけど、その怒りが爆発する時には圧倒的な支配力を感じます。「静」と「動」の違いを感じる、お二人それぞれのファントムが存在します。橋本さとしさんはまだ観ることが叶っていませんが、非常に人間くさいファントムだという話をアチコチで聴きますので、これもまた楽しみです。
クリスティーヌも3人3様です。なので組み合わせの違いは、もう無限大と言っていいほどの違いを浴びることができると思います。
私は、初日(市村・平原)と2日目(石丸・笹本)を鑑賞したのですが、なんと初日に舞台機構アクシデントによる中断という貴重な経験をしました。
クリスティーヌの前に、いよいよファントムが登場するシーンでなんと舞台がストップ!
舞台上にはクリスティーヌ一人だったのですが、そこにスーツを着た主催の方が出てきて、「舞台機構のアクシデントにより一旦中断させていただきます」と言って平原クリスティーヌと一緒にはけていきました。
舞台には大道具の方々がたくさん現れて、脚立や様々な道具を使い調整を行っていました。その後、改めて休憩をはさみ、演出家のサイモン・フィリップスさんから、演出を一部変更して公演を続けるという説明がありました。1幕冒頭でクリスティーヌが息子に、「心の目で見る」ことの大切さを説くナンバーを引用し、「私たち演劇人は、舞台にマジックをかけることを仕事にしているけれど、今日はマジックがかけられない。あなた方の目の前には、観てはいけないモノたちがたくさん出てきます。でもクリスティーヌが言ったように、どうか心の瞳で観てください」というウイットに富んだ挨拶には、会場から大きな拍手が沸きました。そこからは、確かに観てはいけないモノが見え隠れする舞台でしたが、私的には非常に勉強になることが多い時間でしたし、あってはいけないことだとは思いますが、舞台には完全も完璧もないし、ましてや保証されるものでもない。という舞台ならではの醍醐味を味わうことができました。まさしく《Show Must Go On》~どんな逆境にあっても、計画され、もう始まったものは最後までやり遂げなければならない~という精神を感じました。サイモンさんの挨拶のように、アクシデントをポジティブに転換できる思考や機転や技術や実力や柔軟性や…あらゆる《力》によって成立している舞台ってすごくないですか?
ますます舞台の虜になってしまうようなアクシデントでした。
日生劇場名物の扮装リスちゃん。1日目と2日目の違いわかりますか?
●次回放送
2025年2月5日(水)10時10分~
ラブ・ネバー・ダイより、「美の真実」
歌:石丸幹二さん&熊谷俊輝さん
劇中唯一のロック調のナンバーです。大中小の三重盆が、すべて違うスピードで動いたり逆回転したりする迫力満点のシーンで、ファントムとクリスティーヌの息子グスタフが歌い上げる雄大なナンバーです。
ステージナビゲーター★飯田裕美
©2025 Oita Broadcasting System, Inc. All Rights Reserved.