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ライド・ライク・ア・ガール

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   2020/08/04

衛藤賢史のシネマ教室

オーストラリア競馬界では、[メルボルンカップ]のレース優勝者がその年の最高選手として、ファンにとってレジェンドな存在として語り継がれる名誉なレースなのだ。この[メルボルンカップ]での長い歴史の中で、はじめて女性騎手として優勝したのがミシェル・ペインである。

この作品は、女性偏見が強い競馬界の中で女性騎手ミシェル・ペインが栄冠を手にするまでを描いた実話ドラマである。レース馬の優秀な調教師ペイン(サム・ニール)の10人の子供の末娘として生れたミシェル・ペイン(テリーサ・パーマー)は生まれてすぐに母を交通事故で亡くした。母の愛を補うように父ペインと9人の兄弟姉妹は、一家団結してミシェルを守り育てる。その愛によってミシェルはすくすくと育っていったのだ。ペイン家の兄弟姉妹は競馬界のサラブレッドとして騎手や調教師の道に進んでいく。ヤンチャで負けず嫌いのミシェルも、当然のように女性騎手を志望するが大ケガのリスクの高い騎手に兄弟姉妹は反対するも、父ペインはミシェルの稀有の才能を認め応援することになる。男性騎手に比べて体力が劣ると見る馬主たちは、大きな賞金のかかるレースには女性騎手を信用しない傾向の強い、この世界の常識にペインも苦労することになる。そんな時、騎手になった姉がレースで落馬し亡くなるというショックな事故が起きる。だがミシェルは怯まない!彼女も落馬で大ケガをするも負傷が癒るとすぐに馬に乗るという男性顔負けのガッツを見せる態度に、ある調教師がケガが多い馬をミシェルにあずけてくれる。その馬の性格など綿密にチェックしつつミシェルは馬の才能を見つけ、連勝をつづけてポイントを獲得し、[メルボルンカップ]の出場権を獲得する。オーストラリア中の人々が一年の締めとして固唾を飲んで見守る中、オッズが100倍を超えるという低い評価を背負ったままミシェルの大勝負の幕が切って落とされた。

ラストの[メルボルンカップ]で20頭近い馬が3200mの距離を馬体をはげしくぶっつけ合いゴールへと疾走するシーンは競馬ファンにとって必見の迫力ある画面構成となっていたのだ。確かにこれを見るとわずかな隙間を見つけそこに馬を入れるテクニックなど一歩まちがうと命の危険を感じながら勝負するには、ペインの父がミシェルの才能を認めながら、あやふやな態度を見せる前半シーンの意味がよく理解できた描写だった。奇をてらわずにミシェル一家の温かい厚情を中心に描きながら、競馬レースの熾烈な騎手たちのかけ引きなどもきっちりと入れる描写など気持ちのいい作品であった。

ぼくのチケット代は、2300円出してもいい作品でした。

星印は、3ッ半さしあげます。

5点満点中3.5点 2300円

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