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衛藤賢史のシネマ教室

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   2020/08/25

中島みゆきは、聞く人々の心の襞をはげしく揺さぶる曲が多いが「糸」もその代表的なひとつである。その曲にインスパイヤーされた内容を、林民夫がオリジナル脚本化し、大分県出身の瀬々敬久が監督した、[平成]31年間という時代の流れを背景にした愛の軌跡を描いた作品である。

平成生まれの高橋漣(菅田将暉)と園田葵(小松菜奈)は、北海道の美瑛で育った。ふたりは13歳の夏、美瑛の花火大会で偶然の事故を通して知り合い、運命の[糸]に導かれるように魅かれ合ったふたりは清らかな交際をはじめた。だが葵は、漣に何も告げず姿を消す。必死の思いで葵の行方を探す漣は、札幌にいる事をつき止め会いに行く。葵が養父の虐待を日常的に受けているのを知った漣は、衝動的に駆け落ちを決行するも警察に保護され、ふたりは引き離された。それから8年後、葵への思慕を胸に秘めたまま、地元のチーズ工房で働いていた漣は、親友(成田凌)の結婚式で、葵との再会を果たすが葵には同棲している男(斎藤工)がいることを知る。葵は、大学に通いながら学費は夜の仕事で賄って暮らしていた。悲しい再会となった漣は、立ち去る葵を見送り北海道で生きていくことを決心する。そして葵は、男の事業の失敗で自立していくことを決め、シンガポールで友人とネイルの仕事をはじめる。ふたりの心の[糸]は切れずとも、すでにふたりは別々の人生を歩みはじめていた。漣はチーズ工房の快活な性格の同僚と結婚し娘をもうけ、チーズ作りに励み、葵はシンガポールで事業を拡大していく。そして10年後、平成最後の年になる2019年!ふたりを結んだ運命の[糸]は、ふたりを再びめぐり逢わせようとしていた…。

漣と葵の細くしかし断ち切れない思いの[糸]が導く愛の軌跡を描きながら、その背景となる平成31年間の様々な過酷な出来事を横糸として描くこの作品は、18年に渡る年月を描くため、ふたりの心理状態や行動が未消化のまま物語を急いで進ませるという見る人にとって感情移入しずらい描写が多々ある作品となっていたのは残念であった!加えて、このシーンはいらないのではないかと思う描写を長々と見せたりする設定など、物語の流れに乗りにくい作品となっていたのです。

ぼくのチケット代は、1900円出したい作品でした。

星印は、2ッ半さしあげます。

5点満点中2.5点 1900円

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