時間軸や次元を自在に操る内容を映像化しつづけるC・ノーランの作品は、その卓越した映像センスで魅力的であるが同時に内容を咀嚼するのに苦労する映画作家です。今回の「TENET テネット」は、簡単に言うと未来の人類が過去に当たる現代社会の人類を襲う!という内容となっています。
キエフ国立オペラ劇場が突如現れた武装グループに占拠された。CIAエージェントの<名もなき男>(ジョン・D・ワシントン)は、観客の命は救ったが敵に捕らえられるも謎の組織に保護された。その組織の任務は、現代人を殲滅させるため時間を逆行してきた未来人と対峙するものであり<名もなき男>もその重要な一員だと知らされる。当てがわれた相棒ニール(ロバート・パティンソン)と共に、未来人のエージェントと目されるセイター(ケネス・ブラナー)の動向をさぐる<名もなき男>はセイターの妻キャット(エリザベス・デビッキ)と知り合い、キャットの情報から知らされるオスロ空港の保管庫をニールと襲う。そこは未来人が現代社会に侵入する回転ドア―が隠されていた。未来人からの情報で事情を察知したセイターは、<名もなき男>を別荘のあるアマルフィに呼び始末しようとするが、キャットによってヨットから落とされ命の危機に瀬したのを<名もなき男>から救われる。激怒するキャットだが<名もなき男>はセイターの命を守らなければならない秘密があったのだ。そして局面は緊迫してきた。時間を逆行して現代社会を殲滅しようとする未来人と、それを阻止しようとする現代人とのハルマゲドンな戦いがはじまったが…。
未来からやってきたことが現代とすべてが逆行することになる未来人の行動と、すべてが正常な動きの現代人との動きなど斬新な撮影方法で見せるド肝を抜く演出方法に加えて、戦闘シーンやオスロ空港の旅客機を倉庫に突っ込ませるド派手なエンタティメント性を随所に盛り込み、ドラマの核はぼくら普通の頭では理解不能で物理現象に据えて展開するこの作品は、もう流れを掴む努力を放棄して体感で感じるしかないのだ。ただ言えることは、C・ノーランのこれまでの作品ではいちばん派手でエンタティメント性を強く出したという思いで見た内容だったのだ!それにしてもキャット役のA・デビッキの背の高さにはビックリしました!
ぼくのチケット代は、2400円出してもいい作品でした。
星印は、4ッ半さしあげます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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