名子役として数々の映画祭で受賞した芦田愛菜が6年ぶりに復帰し、15歳で主演し話題となった作品だが、薄い膜をおおったようなナイーブな15歳の少女の心を繊細な演技で見せてくれる佳作となっていたのだ!
ごく普通の家庭の次女として誕生した林ちひろ(芦田愛菜)は、未熟児で生まれ病弱な体質だった。そのため両親(永瀬正敏/原田知世)はあらゆる療法を試したものの効果はなく、[金星のめぐみ]という<あやしい宗教>の水の力にすがった。それが劇的に効いて、ちひろはみるみる元気になったのは良かったが、両親がすっかり[金星のめぐみ]信仰に嵌まってしまった。そして15年後、そんな両親に嫌気がさした姉のまーちゃん(蒔田彩珠)は家を出てしまうが、中学3年生になったちひろは、そんな両親が大好きでいつまでも一緒に暮らしたいと思っている。もちろん両親がそんなになったのも自分が病弱ゆえに起きた事だとも理解していた。だから親友のなべちゃん(新音)が親友ゆえの気安さから、自分の家族のことをあけすけに冷やかすのもへっちゃらで小学生時代から受け流し仲良くできたのだ。そんなちひろの憧れの人は新任数学教師の南先生(岡田将生)だった。それを知っているなべちゃんとボーイフレンドの新村(田村飛呂人)が一計をはかり、南先生から3人を車で送らせる算段をする。そして、ちひろの自宅付近で両親があやしげな修行をしているのを目撃されてしまう。いちばん見られたくない人から両親のそんな姿を目撃され、あまつさえ南先生の口から出た言葉にちひろはショックを受ける。
両親の[信仰]に関係なく普通の感性で両親の自分への深い愛情を素直に受けとめて日常を淡々と過ごすちひろの生活に、それを異とする世間の感覚の違いを自覚させようとする人々をちひろの前に配してドラマティックな流れにするのではなく、大森監督はちひろの繊細な内面の感情を描写していくことに終始している。同時にそれはちひろを演じる俳優の演技力を信じることによって成立しえる内容となっているのだ。その起用に芦田愛菜は十分に応える抜群の演技を見せてくれたと思う。もう子役でなく、深い表現のできる演技力のある俳優として育つだろうと予見されたモニュメントな作品となっていたのだ!そして、ちひろの小学生時代を演じた粟野咲莉の飄々と演技も、ちひろの性格を以降の流れで理解させるような好演していたことをつけ加えたい!
ぼくのチケット代は、2500円出してもいい作品でした。
星印は4ッ半さしあげます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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