塩田武士による同名小説を、「アンナチュラル」などで人気の高い野木亜紀子が脚本を担当し、演出は様々なジャンルを手がけている土井裕泰監督となっています。よく練られた脚本を、土井監督がテンポのいい展開ながら語り口は重厚で切れのある内容の見応えのある作品となっていました。
京都で父親の後を継いだテーラーの曽根俊也(星野源)は、ある事から幼少時代のカセットテープを見つけ、流れてくる自分の声に疑問を覚える。その頃、大日新聞大阪文化部記者・阿久津英士(小栗旬)は、社会部デスクの鳥居(古館寛治)に呼び出され平成・昭和の未解決事件<ギン萬事件>の掘り起こしを命じられる。この事件は35年前に日本中を震撼させた一部上場企業の食品会社を標的とした劇場型犯罪で、警察・マスコミを翻弄しつづけた後犯人グループは忽然と姿を消した、謎につつまれた案件であった。もう時効が成立している1980年代の怪事件の掘り起こしに首をかしげながら調査を進める阿久津だったが、残された脅迫テープに犯行グループが三人の子供の声を使用している事が事件を読み解くキーとなるのではないかと思いはじめる。一方、俊也はテープと一緒に保存されていた英語で書かれたノートから<ギン萬事件>での子供の声は自分だと確信し、そこに父の兄が絡んでいたのではないかと推測し独自に調べはじめていた。そして、その過程で俊也と阿久津は邂逅することになる。ふたりはチームを組み、この頑是無い子供まで巻き込んだ禍々しい事件の真相に迫っていくのだが…。
1980年代に実際あった<グリコ事件>をモチーフにしたこの作品は、過去と現在をテンポのいい展開で見せながら冴えた描写で事件の真相に迫っていくスリリングな内容となっているのだ!142分という長さも忘れさせ、見る観客をグイグイ引っ張っていく、脚本担当の野木亜紀子の寸分の隙もない緻密な構成力と、土井裕泰監督の骨太の描写力によって一級のサスペンス作品となっているのです!主役の小栗旬と星野源の演技も抜群であり、脇役の的確な配置と相まって、久しぶりに心から堪能できる日本映画のスケール感あふれる内容となっていたのだ!
ぼくのチケット代は、2600円出してもいい作品でした。
星印は、5ッさしあげます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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