イタリア映画の「おとなの事情」は傑作コメディだった。それを日本風にアレンジした作品です。
ある出来事(それは後半に分かります)から仲良くなった3組の夫婦と独身男の7人が恒例の食事会に集まります。50代のセレブな医師夫婦(鈴木保奈美/益岡徹)、40代の倦怠期に入った夫婦(常盤貴子/田口浩正)、30代の新婚夫婦(木南晴夏/渕上泰史)そして塾講師をしている独身男(東山紀之)のメンバー。忌憚のない仲間になったメンバーは、なぜかコンビーフの缶を前にしてパーティーは盛り上がる中、新婚夫婦の妻の提案で全員のスマホに届くメールと通話の内容を公開するというゲームにギクッとなりながらも、別に後ろめたい事はないとテーブルの上にスマホを出し、それを全員が見る聞くというゲームがはじまった。でも全員が内心はドキドキしていた。それはそうだ!人間ってのは何がしの秘密を持っているものだ。親しい仲間にも夫婦でも知られたくない秘密を!この時間帯だけはスマホが鳴らないことを心から祈るメンバーたち。でも無情にも次々とメンバーたちのスマホに着信音の軽やかなメロディが響きはじめる。まずは倦怠期夫婦の夫そして独身男から。そして各人のスマホに着信音のメロディが鳴るにつれ状況は悲惨の一途をたどり、楽しいはずのパーティー現場は修羅場と化していくのだが…。
イタリア映画の場合、お国がらがあるのか修羅場と化してもどこかカラッとした内容でコメディとして楽しめたのだが、日本風にリメイクされたこの作品はだんだん笑えないウェットな内容になっていくのです。あえて、ある出来事による親しい間柄になった事情を後半まで伏せているので、集まった仲間の相関関係が分からず、何でこんなに家庭環境の違う人たちがこんなパーティーを開いているのか皆目見当もつかず見るぼくら観客との乖離感がありすぎるのだ。だから、前半の伏線もあまり効果がなく、その出来事が判明しても<ふ~ん、そうなのか!>しか思えず冷めた感覚で修羅場でのパーティー・シーンを見てしまう作品となっていたのは残念でした。
ぼくのチケット代は、1800円出してもいい作品でした。
星印は、2ッさしあげます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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