1960年、アルゼンチンの貧民街に生れ60年の生涯を終えた!天才サッカー選手ディエゴ・マラドーナの波乱に富んだ人生を、マラドーナ本人の承諾を得て500時間に及ぶ貴重な秘蔵映像から抜粋し、その栄光と挫折の光と闇の世界をイギリス監督アシフ・カパディアが描いていったドキュメント作品です。
15歳でアルゼンチンのプロ・サッカーに入団したディエゴ・マラドーナの真の目的は貧しい家族を人並みの生活にする事だけだった!その才能を認めたスペインのバルセロナに移籍したものの、怪我などの不運もあり、1984年24歳の時、セリエAの降格圏内をうろつくSSCナポリに移籍した。高額の移籍金の裏にナポリのマフィアが関係したという噂があった移籍だった。記者が移籍会見でマラドーナにその事を質問しナポリの会長が激昂する映像がこの作品でも紹介されている。当時のマラドーナはそんな噂は知らないのにだ。だが噂はどうであれ、マラドーナはこのチームで真価を発揮しはじめた。そして、<ナポリっ子が気にするのは、自分や家族の事でなく日曜のサッカー試合だ>と言われる熱狂的SSCナポリは、マラドーナを愛した。
1986年[メキシコ杯]でのベスト8、対イングランド戦の「神の手」「5人抜き」で世界中のサッカー・ファンのど肝を抜き、ノーマークのアルゼンチンをW杯優勝に導いた。ディエゴ・マラドーナは一躍世界中のヒーローとなったのだ!さらに1987年、セリエAで優勝させる事によってナポリの<神の子>と称される。しかし、この頃からジュリアーノ一家との交際で裏の世界に入り込むことになる。映像ではバルセロナで麻薬の味を覚えたと証言しているが、ジュリアーノ一家は麻薬をマラドーナに提供しつづける。<ディエゴ>として家族を楽にさせたいという愛すべき青年が<マラドーナ>である時は歯止めのきかない青年となっていく過程が様々に映像によって、二つの顔となる痛ましい紹介が切ないのだ。
さらに、次の[イタリア杯]でマラドーナは準決イタリアに勝つ。それもナポリが会場の試合でだ!マラドーナはイタリア中の憎しみを買ってしまったのだ。マラドーナは麻薬でイタリア検察に逮捕!奈落への道がはじまる。栄光の試合、家族との絆、マフィアの忍び寄る手、<神の子>が<悪魔>とののしられる<ディエゴ>と<マラドーナ>の挟間をドキュメントしたこの作品は、<ディエゴ>への深い愛情と<マラドーナ>への哀惜を、ぼくらにしみじみと問い掛ける一級のドキュメントな内容となっていたのだ!
ぼくのチケット代は、2400円出してもいい作品でした。
星印は、4ッ半さしあげます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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