『ネブラスカ、ふたつの心をつなぐ旅』で、伝統あるカンヌ映画祭史上最年長となる主演男優賞を獲得したブルース・ダーンが、再び元気溌剌とした老人を演じるコメディ作品です。今年85歳となるブルース・ダーンの衰え知らずの演技を存分に楽しむ作品となっています。
70歳のクロード(ブルース・ダーン)は、愛妻を亡くしLA郊外に一人暮らしをしている。辛口の演劇評論家だったクロードは、今や親友のシェーン(ブライアン・コックス)と、あれやこれやの薬の効用を喋り合う生活を送る隠居老人となっている。そんなクロードの唯一の悩みは、愛する娘の夫で州の副知事をしているクロードとは反りの合わない義息の女性との醜聞報道で、孫娘が高校で苛めにあっていることだった。そんなある日、昔の恋人であった人気舞台女優のリリィ(カロリーヌ・シロル)が、アルツハイマーを患い施設に入った事をニュースで知る。20代で新進気鋭の演劇評論家だったクロードは、人気絶頂のリリィと道ならぬ恋に陥った激しい恋の過去を再び思い出した!切ない別れから43年経った今、リリィの病状を知ったクロードの心は騒いだ。クロードは親友のシェーンを口説き落として自分もアルツハイマーの患者として、その施設に入院することに成功する。守備よくリリィに接近したものの、リリィの心は虚ろでクロードとの出来事は記憶に残ってない有様。しかし、往年の情熱を取りもどしたクロードは、根気よくふたりの過去の想い出を語りかける内に、リリィの代表作であった「冬物語」の台詞に反応するのを発見する。クロードは高校で演劇部に入っていた孫娘に訳を話して、ある作戦を一緒に実行することにするのだが…。
老いてもなお、若き日の情熱を心に残すクロードの精力的な行動を描くこの作品は、ブルース・ダーンの軽妙な演技が見ものとなる内容となっていた。ただ脇筋になる娘の夫の事件が本筋にあまり絡まずに進行するのが欠点となっていた。むしろ、脇筋にこだわらずにクロードのアルツハイマー施設での行動に絞る内容の方が見易くなり、それに家族がしだいに理解していく手法の方がブルース・ダーンの個性が生きるのではないかと思われる作品であった。
ぼくのチケット代は、2100円出してもいい作品でした。
星印は、2ッ半さしあげます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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