2021年度のアカデミー作品賞&監督賞&主演女優賞を獲得した作品です!ジェシカ・ブルーダーのノンフィクション「ノマド漂流する高齢労働者たち」を基に、クロエ・ジャオ監督が、ひとりの女性にスポットライトを当てストーリー化した内容となっています。
ネバダ州にある小さな町の零細企業の破綻で、町全体が消滅してしまい長年そこに住みつづけたファーン(フランシス・マクドーマンド)は、キャンピングカーに必要最低限の品物と亡き夫との思い出を詰め込み、ノマド[遊牧民]として広大なアメリカ大陸の各州を渡り歩く季節労働者となる。キャンピングカーを家として、季節ごとに労働者を求める各地を回るノマドの大半は高齢の人々だった。そこには誰からの世話も受けずに季節労働者として自活することを望む人々が、出会い別れていく動くタウン<ノマドランド>だった。キビキビと働き集う人々の世話を焼くファーンは、ノマドの仲間たちの人気者だ。酷寒の場所、炎暑の場所でのキャンピングカーでの生活と労働は苦労も多々あるが、集合離散しながら出会う仲間たちとの生活にファーンは生きている実感を感じていた。しかし、高齢者の多いノマドの仲間なので悲しい別れもある。それを覚悟しながら個としての人間の誇りを心に刻んでノマドとして生きていく人々をファーンは愛し尊敬しながら、広大なアメリカ大陸の様々な顔を持つ場所への旅をつづけていくのだった…。
春夏秋冬の季節がくっきりとする(昨今はこの四季の色合いが曖昧となったが)日本という島国では、季節に愛でる繊細な精神が文化として色濃くあるが、この作品を見ると広大なアメリカ大陸(976万平方キロ=日本の約26倍)の容赦ない酷寒酷暑の自然描写の荒々しさに息を飲んでしまった!<さあ来やがれ自然よ>というタフな精神で自然と立ち向かわなければ生き抜くには容易ではない思わせる風景描写の凄味があり、日本とはケタ違いの精神風土が育つのも納得させてくれる作品となっていたのだ!そこには中国大陸出身の女性監督クロエ・ジャオが持つ自然への共感性が、その千変万化する荒々しい土地で生き抜く人間のタフな営みを表現し得たのではないだろうか。
ぼくのチケット代は、2600円出してもいい作品でした。
星印は、5ツさしあげていい作品でした。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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