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大綱引の恋

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   2021/05/18

衛藤賢史のシネマ教室

佐々部清監督はこの作品を演出した後の2020年3月に62歳で急逝されました。心から哀悼の意をささげます!

思えばデビュー作の「チルソクの夏」(チルソクは韓国語で七夕の意)で、まだ国交が回復していなかった日本と韓国の間で下関とプサンの高校生が毎年スポーツ大会を開催して、その大会を通して知り合った日本の女子高校生と韓国の男子高校生の清純な交際を描いて評価された(地域映画で限定封切りなのをシネマ5の田井さんと大西さんが評価をし、シネマ5で上映し、それが評判を呼び全国封切りにこぎつけた)作品なのです。そして奇しくも遺作となったこの作品も、鹿児島県の薩摩川内市に400年以上つづく大綱引きを扱った地域映画で、主人公の薩摩川内の若者と韓国から研修医として来た若き女性との恋を扱った、日韓の男女の交際を中心に描く内容となっているのです!

薩摩川内に住む有馬武志(三浦貴大)は、代々つづく鳶職の会社の長男で35歳、まだ独身の若者。父の寛志(西田聖志郎)は、伝統行事の<大綱引き>の中心を仕切る一番バチを受け持った(この役は一回のみしか与えられない栄誉ある役割)事もある腕のいい鳶の親方であり、母の文子(石野真子)は女将として会社と家庭を守っていた。ある日、武志は駅で倒れた男性を介抱した折テキパキと治療してくれた研修医ジヒョン(知英)に出会う。心を引かれた武志は韓国人のツアーに通訳として参加し、そこで再びジヒョンに出会い、ふたりは心を通わせるようになる。その頃、伝統の<大綱引き>で一番バチの選出がはじまり、ある出来事から武志は一番バチの大役を担う事になった。対抗する敵の一番バチは妹の敦子(比嘉愛未)の恋人であった。必死で役割を努めようとする武志に、ジヒョンは研修医期間があと二週間で終了し帰国しなければならないと告げる。家庭の出来事、妹の恋人と対抗しなければならない<大綱引き>の事、ジヒョンとの別れ、心が千々に乱れながら武志に<大綱引き>の日が迫るが…。

薩摩川内に、こんな伝統行事が息づいているのをこの作品ではじめて知りました。日本の各地方で様々な伝統行事が守られている事を発信しながら、それを守りつつ地域の人々の心意気を描写するこの作品は、日韓の男女の交際を絡めながら、郷土に住む事を愛しながら日常生活を営む日々を活写していく、見ていて清々しい気持ちにさせてくれる佳作となっていました。ましてや、大分県という地方に住むぼくらにとって格好の清涼剤となる作品となっているのです!

ぼくのチケット代は、2400円出してもいい作品でした。

星印は、4ッさしあげます。

5点満点中4点 2400円

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