佐藤正午が山田風太郎賞を受賞した同名小説を、タカハタ秀太監督が映画化した作品です。何や意味不明で内容がよめないタイトルですが、社会の裏に潜むダーティな世界の出来事を、フィクション小説として描こうとした小説家の頭の中の構想と実際の話しを虚々実々に織り混ぜながら、<嘘>と<実>の世界を観客と共にさ迷う展開となる作品となっているのです。
筆禍事件文壇から姿を消した元直木賞作家の津田(藤原竜也)は、富山県に住みデリヘル系のドライバーをしている(虚実?)。そこで遭遇した出来事を小説構想し、全盛の頃の津田の担当編集の鳥飼なおみ(土屋太鳳)を、とあるバーに呼び読ませる。なおみは津田の筆禍事件の小説担当者であり、またもや筆禍あるかも?と疑心暗鬼だが内容の面白さに、津田の復帰を願い小説発行にかけている。何しろ!一家失踪事件・謎の偽札・謎の裏社会の男の存在等々、スリリングな内容がいっぱい詰まった内容に、なおみはワクワクしていたのだ。津田が語る小説の内容につれて、なおみの頭の中は小説と現実の<虚>と<実>が混在しつつ、津田が虚言回しとして展開する「富山でデリヘル嬢運びのドライバーをしていた津田が偽札を偶然手にした事で裏社会を牛耳る倉田(豊川悦司)から命を狙われながら、心の闇を抱える幸地秀吉(風間俊介)との交流や、チャーミングだが滅法気の強いカフェ店員の沼本(西野七瀬)の助けで、錯綜した事柄の真相に近づく」という話しの真贋を求めはじめるが…。
津田の頭の中の小説構想と実際の出来事、過去と現在のもつれる交錯、<虚>か<実>か?などを津田を虚言回しとして展開するこの作品は、観客であるぼくらの頭の中をよぎる幾重にも錯綜した展開についていくのが大変な内容ともなっていたのです。それだけに、少しでも気を緩めて見ると何が何やら分からない?と唖然とする気持ちになる方も多いと思います。作品の質的にはワルい出来ではないのですが、もう少し観客に親切な描写が欲しかったと思う作品になっていたのです!見る限りタイトルの[鳩]は偽札を意味しているみたいです。
ぼくのチケット代は、2100円出してもいい作品でした。
星印は、3ッさしあげたい作品でした。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
©2025 Oita Broadcasting System, Inc. All Rights Reserved.