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   2021/09/14

衛藤賢史のシネマ教室

北欧の映画祭で数多くの受賞をし、その勢いでアカデミー国際長編映画賞をも受賞した作品です。北欧映画の日本人のイメージは、暗く陰鬱な風景を背景に息苦しくなる人間の情念がたぎる作品だと思いがちですが、この作品は、ユーモラスな内容に、ちょっぴし生きていく上での苦みがスパイスされた作品となっているのです。

デンマークのハイスクール教師・マーティン(マッツ・ミケルセン)は歴史を教えている中年男。妻の(マリア・ボネヴィー)は夜勤勤務ですれ違いの生活。会話もあまりなく中年危機真っ最中で、歴史に興味のない生徒たちに教えるのに飽きて授業にも熱が入らない毎日を送っている。そんなマーティンだが、学校の同僚の心理学担当ニコライ、音楽担当ピーター、体育担当トニーの友人たちとの飲みながら話すときだけ生き返るような気がする生活を送っていた。そんなある日、ニコライがノルウェー人の哲学者が[毎日0.05%の血中アルコール濃度の飲酒をすれば気力がみなぎり人生やる気が起こる]という学説を出したという話しをする。(血中濃度アルコール0.05%はワイングラス1~2杯ぐらいらしい)4人とも中年の入り口の年齢。気力やる気が失せる年代であり物は試しとばかり自分たちの躰で実験してみようと計画する。4人は毎日血中濃度0.05の飲酒をし、ホロ酔いで授業をしはじめる。すると、大胆になり規格外の授業をするマーティンの歴史授業は生徒たちに大受けとなり、往年の博学を入れながら程よく脱線する授業をするのが楽しみになってきた。同僚の3人の授業も生徒たちの評判もよく、実験は成功したと思われたが…。

自分の人生の行く先が見えはじめた中年男の4人組が、惰性で生きる仕事や家庭内生活の出来事に倦む様を見せながら、とんでもない仮説に挑戦して人生のやり直しを図ろうとするのをユーモラスに描きながら、同時に様々な要素を含むそれぞれの人生模様の苦みをちょっぴり加えてくるこの作品は、まさに大人の生き方の悩みを描いていく内容となっている。若き日の理想どおり進まない大人たちの生き方を0.05%の血中濃度アルコールに託して悪戦苦闘する人生模様に、他人ごとでなく切ない気持ちで共感できるのは大人である証しかも知れないのだ。

ぼくのチケット代は、2300円出してもいいと思う作品でした。

星印は、4ッさしあげたい作品でした。

5点満点中4点 2300円

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