世界中から愛され、皆さんもよく知っている[ムーミン]の生みの親であるトーベ・ヤンソンの伝記作品なのです。トーベの故国フィンランドで封切られるや、史上最高のオープニングの興行成績を揚げた作品となっているのです。
第二次世界大戦下のフィンランド・ヘルシンキ。戦火の中、若きトーベ・ヤンソン(アルマ・ポウスティ)は油絵を描きながら、自分の心を癒すように小さな紙切れに不思議な絵画物語の[ムーミントロール]のマンガを描いていた。とめどなく頭に浮かぶムーミン村の幻想的な話しをマンガで綴って戦火の恐怖感をまぎらわせていたのだ。そして戦争終結後、トーベは高名な彫刻家で厳格な父の元を離れて爆撃で壊れた部屋を借りて、本業の油彩制作に打ち込む決心をする。しかし、自分の絵画観と保守的な美術界の間の葛藤に悩まされ、若い前衛的美術の仲間たちと放埓な生活に明け暮れる毎日を送っていた。そんな気持ちを癒してくれるのが[ムーミン]であり、書き溜めたマンガは本業の油彩作品よりも多くなっていた。そんな中、満たされない気持ちのトーベの前に市長の娘で舞台演出家のヴィヴィカ(クリスタ・コソネン)と出会う。誰にも束縛されず己の道を貫き通すヴィヴィカの態度に魅了されたトーベは、禁断の恋に陥ってしまう。その恋はトーベの心からすべての世間の約束事の決まりから解き放つことになる。自分の心を束縛していた芸術という観念は、本業と思った絵画などでない[ムーミン]という手慰みと思われた世界にあることを悟っていく転機になったのだ。世の常識から解き放たれたトーベは[ムーミン]に専念していく、そして…。
[ムーミン]誕生までの軌跡を描いていくこの作品は、作家のトーベ・ヤンソンの心の軌跡でもあり、この当時の世間の約束事を破って大成していく女性の愛と苦しみの軌跡をも描く作品となっていたのだ!
ぼくのチケット代は、2200円出してもいい作品でした。
星印は、4ッさしあげます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
©2024 Oita Broadcasting System, Inc. All Rights Reserved.