是枝裕和監督が、ソン・ガンホら韓国映画のスター俳優たちとタッグを組んで演出した豪華な布陣による、心根のやさしい内容のクライム・ロード・ムービー作品です。
土砂降りの雨の釜山。若い女ソヨン(イ・ジウン)が<赤ちゃんポスト>の前に赤ん坊を置いてひっそりと去っていく。「捨てるなら、産むなよ」とののしる!その前で張り込み中のスジン(ぺ・ドゥナ)とイ(イ・ジュヨン)の女性刑事。実はこのコンビはベイビー・ブローカー犯罪を内偵中だったのだ。スジンが的に絞っていた犯人は、クリーニング店を営むサンヒョン(ソン・ガンホ)と、<赤ちゃんポスト>に勤務するドンス(カン・ドンウォン)だった。そんなことをつゆ知らないドンスは、この赤ん坊の登録を消してサンヒョンの店に連れ込み、本気で子供を望む養子縁組先についての計画を立てていく。その矢先、ソヨンが赤ん坊を取り戻しに施設に来る。あわてたサンヒョンは、訳ありのソヨンを説得して仲間に巻き込み、3人で養子縁組先を訪れる旅にサンヒョンのオンボロ車で出発していく。その後を密かに追跡していくスジンとイの女性刑事の存在も知らないままに・・・。
ストーリーが進むうち「万引き家族」同様、次第にあぶり出されてくる恵まれない境遇に置かれた、ソヨンの悲しいまでに荒れた態度や、ドンスの諦観した冷えた静かな行動の内面に迫りながら、それを包み込むサンヒョンの同じ境遇にある仲間意識へのやさしさを、ユーモアとペーソスを織り交ぜながら描いていくのだ。さらに、追跡するスジンとイの女性であるが故の、警察機構での立ち位置の悲しみを含ませて、追うもの追われるものの立場を超えた、内在する人間の心根のやさしさをカラッとした描写で淡々と描いていく是枝監督の手法が、冴えわたる作品になっていたのです!!そして改めて、その役柄を見事に演じた韓国俳優の演技の確かさを痛感した作品でもあったのです!!
ぼくのチケット代は、2400円出してもいい作品でした。
星印は、4ッ半さしあげます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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