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衛藤賢史のシネマ教室

エルヴィス

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   2022/07/05

世紀のロックンローラーと謳われた<エルヴィス・プレスリー>の怒涛の如く駆け抜けた人生を、映像のテクニシャンであるバズ・ラーマン監督が演出した作品です。

貧しさゆえに、黒人が住む地域に暮らしていた白人一家のエルヴィス・プレスリー(オースティン・バトラー)は、幼い感性を慣れ親しんだ黒人音楽を躰に染み込ませて育った子だった。まだ黒人差別が厳然と存在するこの時代で、黒人音楽のリズムは白人社会では忌避されていたのだ。しかし、そのリズムと動きを違和感なく身に着けた、エルヴィスのロックンローラー音楽は、そのセクシーな動きと相まって白人の女性客の熱狂的な支持を受けはじめる。瞬く間にスターになったエルヴィスだが、保守的価値観しか受け入れないこの時代のアメリカ社会の猛烈な反感を受けてしまう。エルヴィスの画期的なパフォーマンスとロックのリズムに新しい時代の到来を予知したトム・パーカー(トム・ハンクス)は、エルヴィスのマネージャーとなり辣腕を発揮して、ライブのみなず映画やテレビに出演させて世界的スターに押し上げる。エルヴィスのたぐいまれな才能にほれ込んでいたトムだが、金の亡者でもある彼は世間的批判を避けるため、警察に厳重に監視されながら逮捕もあり得るエルヴィスの故郷メンフィスのライブ会場でのセクシーなパフォーマンスをやめるよう忠告する。しかし、悩んだ末エルヴィスは自分らしいパフォーマンスを披露して会場は大混乱に陥らせるが、それはのちの世に語り継がれる価値観の変化を告げる、ライブのひとつとなるのだったが・・・。

アメリカ社会の規範に反抗するのではなく、自分の心に従ったままのロックンローラーの道を突き進んだ、先駆的な<エルヴィス・プレスリー>の辛くて楽しかった短い人生の道程を、アメリカ社会のこの時代の偏見に満ちた価値観とない混ぜしながらテクニカルな手法で描いていくバズ・ラーマンのこの作品は、ある意味エルヴィスを描きながら、アメリカの価値観の批判描写に力点を置いた内容となっていたように、ぼくには思われた!そのため、見ている観客が期待したエルヴィス・プレスリーのパフォーマンス描写の本当の魅力が、現代の若者たちにきちんと伝わる作品にはならなかったと、ぼくは考える。それが「ボヘミアン・ラプソディ」との違いなのかな。

ぼくのチケット代は、2200円出してもいい作品でした。

星印は、3ッ半さしあげます。

5点満点中3.5点 2200円

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