飼い主から捨てられ保護された大型犬を、やむなく引き取る羽目になった気弱な青年との愛情を通して、あるアクシデントから遠い距離まで運ばれた<ハウ>と名づけられた大型犬が青年を求めて長い旅をする間のエピソードを綴る内容になっている作品です。
婚約者から捨てられガックリ落ち込んだ気弱な青年・民夫(田中圭)は、区役所の上司(野間口徹)から、動物の保護センターを経営する妻(渡辺真起子)が保護している、白い毛がふさふさした人懐っこい大型犬を飼うことで、心の傷を癒すよう勧められる。前の飼い主から声帯を手術され“ワン”と鳴けず“ハウ”としか声の出ないこの大型犬に民夫は、<ハウ>と名づけ可愛がる。しょぼくれていた民夫が、<ハウ>の存在で元気を取り戻したことに安心する臨時採用の同僚(池田エライザ)は、やさしい心根の民夫に少し心惹かれていた。その<ハウ>が、民夫との散歩中、少年たちが遊ぶボールを追って行方不明となってしまった。実はボールが停車中のトラックに飛び込み<ハウ>と共に青森まで連れていかれたのだ。まったく見知らぬ土地に降ろされた<ハウ>は、民夫を求めて東京までの798kmもある長い距離の旅へと走り出す。福島の原子力発電所事故でのトラウマを抱える少女との出会い、過疎でさびれた町での老婆の親切、修道院での元の飼い主との邂逅をしながら<ハウ>の長い旅の末に民夫と<ハウ>に待っていた≪切なくやさしい≫結末とは・・・。
『原子力発電所後遺症』『地方の過疎問題』『家庭内暴力』など日本が抱える問題意識を<ハウ>の長い旅路に盛り込みながら、内容に厚みを出す意図は理解するが、少し唐突気味で感情移入するには残念ながら胸に響かなかったように思う。特に修道院の『家庭内暴力』の諍いシーンのクライマックス描写はあまりいただけないオーバーな演出術だったと考える。ラストの≪切なくやさしい≫幕切れは「こう来たか」と思わせるいいシーンだった!
ぼくのチケット代は、1900円出してもいい作品でした。
星印は、2ッ半さしあげます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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