韓国系アメリカ人のコゴナダが監督・脚本し、アレクサンダー・ワインスタインの短編小説を映像化した、静謐で独創的なSFドラマです。
≪テクノ≫と呼ばれる人型ロボット(AI)が一般家庭にまで普及した未来世界。中国茶葉の販売を営むジェイク(コリン・ファレル)と、知的な仕事をしている妻・カイラ(ジョディ・ターナー=スミス)は、中国系の幼い養女・ミカ(マリア・エマ・チャンドラウィジャヤ)、そして人間と何ら変わりない外見を持つ中国系風貌のAI・ヤン(ジャスティン・H・ミン)の4人家族で幸せな日々を送っていた。両親が仕事をしている関係で、ヤンがベビーシッター役を務めており、ミカはヤンを実の兄のように慕っていた。ある日、ネット上で開催されるファミリーダンス大会に、ジェイク一家も参加して楽しんでいる最中に、ヤンが突然の故障で動かなくなってしまう事故が発生した。ジェイクは、あらゆる手立てを使って修理の手段を模索していく。その結果、ヤンの体内に一日ごとに数秒間の動画を撮影する特殊なパーツが組み込まれていることが発見されたのだ。そのメモリバンクには、ヤンの意識があり、本当はヤンがジェイク一家をどのような感じで見ていたかをドキドキしながら見るジェイクとカイラ。そして、そこにはヤンのジェイク家族に向けられた温かなまなざしや、ジェイクも知らない若い女性の姿が記録されていたのだ!それは誰か?ジェイクはヤンを知っている人を尋ねて若い女性の身元をしろうとするが・・・。
コゴナダ監督は、ドラマティックな展開をせず淡々と静謐な描写で、人間とAIの交情を描きながら、プログラミング以外の行いは関心のないはずの、AI(ヤン)の心の襞『感情』に生れたと思える感情の発露を、ヤンの心に相当する動画=記憶を通して、人間とAIとの心の交錯で学習していくAIの成長を温かい気持ちで見守りながら、その根底にある民族同士の融和を心から願う気持ちのあふれた良作となっていたのです。
ぼくのチケット代は、2300円出してもいい作品でした。
星印は、4ッ半さしあげます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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