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衛藤賢史のシネマ教室

グリーン・ナイト

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   2022/11/29

アーサー王伝説(5~6C)の余話として14Cに発表された叙事詩を、『ロード・オブ・ザ・リング』の作家トールキンが翻訳した『サー・ガウェインと緑の騎士』を、デビッド・ロウリー監督が映画化した作品です。

アーサー王の妹の子であるガウェイン(デブ・パテル)は、王の甥でありながら怠惰な生活を送る生活をしていたので、青年になっても未だに正式の騎士に任命されていない。それを気にしているアーサー王は、<円卓の騎士>などが集う大事な行事であるクリスマスの宴に、ガウェインを王の一員として参加させる。おどおどしながら参加した宴の最中、異様な風貌をした<緑の騎士>が突然現れ、首切りゲームを持ち掛ける。恐怖の感情から我を忘れたガウェインは、<緑の騎士>の居丈高な挑発に乗り首を切り落とす。だが<緑の騎士>は平然と自分の首を拾い上げ、ガウェインに1年後の再会を言い渡して去っていく。ガウェインはその約束を果たすべく単身で、<緑の騎士>が住む未知なる世界へ旅立つ。そしてその旅で、正体不明の盗賊や、殺され湖に首を投げ込まれた若い女性の首を探したり、人語を話す狐や、ダイダラボッチのような巨人族、原野に突然現れた豪華な屋敷に住む謎めいた住人に遭遇して怪しげな誘惑をされたり、幻想的で奇妙な旅の果て<緑の騎士>と約束の日に再会するのだが・・・。

アーサー王の甥でありながら、勇者でもない平凡なガウェインが、恐ろしい<緑の騎士>との約束を果たすため旅する内に、精神の成長をしていく姿を描くこの作品は、原本が叙事詩であるのでデビッド・ロウリー監督は、その意をリスペクトしながら忠実に再現していく手法で描いていく。幻想的内容になっているのだが、ガウェインが体験するそれぞれのエピソードを、淡々と表層的に描いていくので内容的には物足りない気持ちになるのだ。ラストの表現は、中国古典から取った能楽『邯鄲(かんたん)』のように一夜の夢を思い出す内容に古今東西古典物語の発想の同様性を感じてしまったのが新鮮だった。駄作ではないが、見る観客にとって消化不良を感じるのではないかと思う作品でした。

ぼくのチケット代は、1900円出してもいい作品でした。

星印は、3ッさしあげます。

5点満点中3点 1900円

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