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衛藤賢史のシネマ教室

レジェンド&バタフライ

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   2023/01/31

大ヒット作『るろうに剣心』シリーズの大友啓史監督が、<東映70周年>を記念した総製作費20億円の歴史大作に挑戦した作品です。

<尾張の大うつけもの>と言われ奇矯なふるまいの多い織田信長(木村拓哉)のもとに、斎藤道三の娘・濃姫(綾瀬はるか)が嫁いできた。戦国時代の習わしである政略結婚の一環である。父・道三から信長が本当の<たわけもの>なら殺してもかまわないと言われた濃姫の態度は、最初から挑戦的であり結婚初夜から早くも大喧嘩をする。しかし、強力な後ろ盾の父・道三が美濃の内乱で討ち死にをし、絶望した濃姫は自害しようとしたのを、「濃姫は我が嫁ぞ」と説得する信長に心打たれる。そんな折、今川義元の大軍が尾張に進撃してきたのだ。圧倒的な大軍を前にして信長も絶望的な気持ちになるのを、今は尾張の信長の妻として、濃姫は夫・信長の心を鼓舞し、桶狭間の奇襲で勝利する。この勝利をきっかけに芽生えたふたりの絆は、いつしか天下統一というふたりの夢となる。しかし、相次ぐ血なまぐさい戦いの中で、いつしか信長は非常な【魔王】へと変貌していく。かみ合わぬ夫婦として出発した信長と濃姫は、30年の時を経て一心同体の夫婦となるが、天下統一へのあまりの厳しい過程にしだいに心が蝕まれていくのを濃姫は悟る。そして、運命は容赦なく【本能寺】へと向かっていく・・・。

激動の時代を駆け抜けた30年間の信長と濃姫の変転極まりない夫婦生活を軸にした、戦国絵巻を描いたこの作品は、豪華な衣装やセットに加えてCG技術の粋を集めた安土桃山城の目を見張るような威容など超大作の威信が見られるのだ。瓢けた野卑な尾張武士の人物描写からはじまる信長と濃姫の出会いのシーン。そこから目まぐるしい多彩な戦国武将の登場とつづく、この戦国絵巻の物語は戦国時代の荒ぶる残酷な戦いを活写していく。ただこの物語の軸は、信長と濃姫のしだいに心が触れ合う濃密な時間を中心に据えた内容のはずなのに、表層的な描写の羅列で丁寧に描いていないので、見る人の心に信長と濃姫の愛情心の気持ちが今ひとつ届かぬ隔靴掻痒気分にさせられたのだ。それは、キラ星のような名だたる武将の描写にも見られる現象でもあったのだ。

ぼくのチケット代は、2100円出してもいい作品でした。

星印は、3ッ半さしあげます。

5点満点中3.5点 2100円

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