ベルリン国際映画祭で高い評価を受けた中国映画です。母国・中国では、この作品を見た若い世代からの、ネット上の口コミで大ヒットしました。
物語の舞台は、2011年の中国西北地方の農村。婚期をはるかに超えた、貧しい農民・ヨウティエ(ウー・レンリン)と、身体の不自由で内気な女性・クイイン(ハイ・チン)が見合いさせられている。ふたりはおたがいに家族の厄介者であり、貧しい家庭の食い扶持を減らすための見合い結婚だった。年老いたロバと、荒れ果てた土地のみ与えられた、クイインとヨウティエ夫婦は不平も漏らさず与えられた土地をふたりで力を合わせて耕していく。クイインは問答無用の見合いの席で、年老いたロバを叩く家族の中で、やさしくロバを撫でるヨウティエを見て「この人なら結婚していい」と思っていたのだ。極貧の生活の中、ヨウティエは身体の不自由なクイインを慈しみ黙々と荒れた土地を耕していく。徐々に、ふたりの働きに合わせるように荒れ地に麦の穂が実りはじめた。さらに、ふたりの手で質素な家を作り、後払いでもらった卵から鶏の雛も生まれ生活の基盤が立ちはじめる。ヨウティエとクイインとロバだけではじまった生活も、生きていく目途が立ったころ、自然の猛威や大きく変わりゆく中国の発展の波にさらされはじめる・・・。
中国のみはるかす広大な景色を背景に、貧しい農村の生活を描いていくこの作品は、人の心の幸せの在り様を静かな描写の端々に染み入るように描いていくのです。ヨウティエの寡黙な言葉にある、生きとし生きるものへの慈しみや感謝の念が、それを端的に表している。見ていて心が痛むヨウティエとクイインの極貧の生活で育む、おたがいへの慈しみの心が黄金のように光り輝く作品となっているのです。そして、この良心的作品のテーマを素早く察知して、ネットで拡散させた中国の若い世代に拍手を送ります。
ぼくのチケット代は、2500円出してもいい作品でした。
星印は、5ッさしあげます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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