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衛藤賢史のシネマ教室

湯道

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   2023/02/28

シャワーではなく<お風呂に入る>という行為は、日本人にとって当たり前の感覚だ。そんな清潔な風習を<湯の道=湯道>とアイデアした、小山薫堂のユーモアセンスの良さに脱帽です。

亡き父が遺した『まるきん温泉』というある町の銭湯は、時代の波にあらわれて細々と経営していた。跡を継いだのは次男の悟朗(濱田岳)であり、長男の史朗(生田斗真)は家を後にして東京で売れっ子の建築家として活躍していたはずだった。父の葬式にも顔を出さなかったその史朗が突然もどってきて、店を守る悟朗に銭湯をたたんでマンションに建て替えるというアイデアを出してきた。亡き父の店を守ってきた悟朗と、キビキビとここで働く銭湯女子・いづみ(橋本環奈)や、薪を毎日運んでくれる謎めいた風呂仙人(柄本明)は、史朗のバッド・アイデアに反対する。一方、まもなく郵便局員を定年で退職する横山(小日向文世)は、<入浴についての道を究める>という【湯道】に魅せられて家元から<湯の正しい道>なる教えを学んでいたが、家の風呂の改装のため『まるきん温泉』に通いはじめ、庶民が集う銭湯の楽しさを感じはじめる。しかし、『まるきん温泉』が閉店する噂に、銭湯の楽しさを知った横山は憂うのだった。侃侃諤諤のあり様の中、『まるきん温泉』のボイラー室でボヤ騒ぎがあり悟朗が入院し、客に愛されていたカンバン娘・いづみの助言で、史朗が悟朗が退院するまで店主と番台に立ち、客たちの銭湯にたいする深い愛情を肌に感じていく。そんな悟朗と史朗の間を取り持っていたいづみが、忽然と愛した『まるきん温泉』から姿を消した!少ない情報をたどって悟朗と史朗は、いづみを探して歩くが・・・。

風呂にたいする小ネタを劇中に万遍なく散りばめながら、日本人の風呂好きのあり様を描いていくこの作品は、観客を退屈させない仕上がりを見せていたと思う。おごそかな<湯の道を究める【湯道】>への諧謔味に満ちた描写は、小山薫堂のアンチテーゼが濃厚に出ているのだ。日本人のお風呂好きは、ワイワイガヤガヤ言いながらお互いにスッポンポンの裸になり身も心もさらけ出して楽しむことに真髄があると思う、おごそかな【湯道】への逆説に満ち溢れる内容となっているのです。しかしながら、結末をまとめきれない安易なラスト描写はいただけなかったのだが、橋本環奈のキュートな魅力で僕は情けないことに許してしまったのです。

ぼくのチケット代は、2300円出してもいい作品でした。

星印は、3ッ半さしあげます。

5点満点中3.5点 2300円

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