『おみおくりの作法』で世界中の映画ファンを感動させた、ウベルト・パゾリーニ監督の新作です。日本では昨年、阿部サダヲ主演で『アイ・アム・まきもと』としてリメイクされました。
過去につらい体験を持ちながら、穏やかな性格のジョン(ジェームズ・ノートン)。33歳の今、妻に去られ窓ふき清掃員として4歳のマイケル(ダニエル・ラモント)との二人暮らしをしていた。貧しい生活ながら、マイケルを慈しみシングルファーザーとして淡々とした毎日を送っている。じつはジョンは、若くして不治の病を患い、残された余命はあとわずかの身だったのだ!ジョンは、里親制度の法を頼り【養子縁組】事務所の事務員と、マイケルの<新しい親>を探し始める。事務所に登録した何組もの【家族候補】とマイケルを連れて面会するが、父の病状の意味も分からないマイケルの怯えた表情を見て決断が鈍るジョン。そんなジョンは、事務所の献身的なソーシャルワーカーに出会い、ジョンとマイケルの場合が国の定めた【養子縁組】の条項に違反する<父と暮らしている場合>と承知しながら世話をしてくれていると知り、自分の不甲斐なさに押しつぶされそうになりながら、マイケルにとって【最良の未来】を選択しようとするが・・・。
フランス映画の『1640日の家族』と逆バージョンのこの作品は、残されたわずかの時間に幼い息子の未来を考えながら里親探しに奔走する、若い父親の姿を描いていくのです。残されたわずかな寿命に34歳の誕生日を迎えた、ジョンとマイケルだけのバースデイ・ケーキの蝋燭の数に、無心のマイケルが蝋燭の数を足そうとするシーンは、ジョンのみならず見ている我々にも【生と死】の悲しみを誘うのだ!ジョンの死までを描かず、ジョンとマイケルの生ける生活だけを描いていく、【死】を直接に描かず、淡々と生活描写に徹した手法の、やさしさと悲しみが交錯する描写により、ウベルト・パゾリーニ監督の【死生観】が伺える良質な作品となっているのです!『1640日の家族』同様、子役のダニエル・ラモントのキュートな可愛らしさに参りました!
ぼくのチケット代は、2300円出してもいい作品でした。
星印は、4ッさしあげます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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