ある事情から脱北した天才数学者と、超一流高校で挫折寸前の男子学生との、心の交流を描いていくヒューマンドラマです。韓国映画のドラマ作りのうまさを堪能できる作品でした。
学問と思想の自由を求めて、北朝鮮から韓国に脱北した天才数学者・ハクソン(チェ・ミンシク)は、自分の正体を隠したまま、韓国の上位1%の成績優秀者が集う超一流の私立高校で夜間警備員として密かに生きていた。不愛想で全寮制の生徒達を冷たく取り締まるハクソンは、生徒達から嫌われる存在だった。富裕階級の生徒たちが大半なこの高校は、世間からの隠れ蓑の一環として庶民階級の少数成績上位者の生徒を特別待遇として入学させていた。そんな生徒の一人に母子家庭のジウ(キム・ドンフィ)がいた。ジウは数学が苦手で担任から普通高校への転校をほのめかされている。ジウはある出来事からハクソンが難解な数学を研究しているのを知り、藁をもつかむ思いで数学を教えてとお願いする。素直でまっすぐな性格のジウに、ハクソンはほだされ数学を教えることになる。名門大学の受験に必要な問題の正解のみにこだわるジウに、問題を解く【過程】の大切さを教えるハクソン。ジウは数学の楽しさを知っていく。そんな奇妙な師弟関係を楽しみはじめた時、世界中の数学者が百年以上解けなかった『リーマン予想』を解読した数学者としたハクソンの存在が世間を騒がせる。脱北して身を隠したハクソンを、韓国や北朝鮮の政府が必死で探し始めるが・・・。
数学をテーマにした作品は『グッド・ウィル・ハンティング旅立ち』(米・1987)や『博士の愛した数式』(日・2005)などが知られているが、この作品は知的な娯楽映画として、よりドラマティックな内容となっていると思う。凄惨な事情を抱えた脱北者の天才数学者と、庶民階級から特別入学を許されながら数学が苦手で普通の高校への転校を強要されている高校生との、心の交流をドラマの核に据えて描きながら、朝鮮半島の政治事情を挿入して展開させていく手法は、ユーモアとスリリングな内容を同居させ、ぼくら観客を最後までハラハラドキドキさせてくれる娯楽作品となっているのです!そして数学の奥の深さを感じさせてくれる、円周率の『π(パイ)』を曲にしたピアノ演奏のシーンなど見所いっぱいの内容となっていたのです。
ぼくのチケット代は、2400円出してもいい作品でした。
星印は、4ッ半さしあげます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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