カンヌ国際映画祭で評価され、英国アカデミー賞を受賞した新人監督のシャーロット・ウェルズの作品です。11歳の少女が父親とふたりきりで過ごした夏休みを、その20年後、父と同じ年齢になった彼女の視点で綴る作品なのです。
母と暮らす11歳のソフィ(フランキー・コリオ)は、別れて暮らす31歳の父・カラム(ポール・メスカル)と、夏休みの短い期間だが一緒に過ごすために団体旅行だが、トルコの小さなリゾート地を訪れる。イギリスの夏と比べると、眩しく降り注ぐ陽光の中、ソフィは若き父・カラムが入手したビデオカメラを互いに向け合い、父との濃厚な時間を共にする。父と潜るスキューバダイビングや、ホテルのプールでのたわむれあい、団体旅行のメンバーの若者たちとの交流、輝く陽光に日焼けを避けるため父と塗りあう<アフターサンクリーム>の奇妙な手触り、そのすべてが11歳のソフィには眩しい毎日だった!ソフィを心から愛する若き父・カラムは豊かでない身の上で、さらに旅行前に手首を骨折しギブスをはめていたが、途中からギブスを外しソフィに護身術を教えたり、リゾートの若い女性に目もくれず、自分の身の丈にあった事柄で一途にソフィを楽しませることに尽くしてくれる。ソフィは父・カラムと陽光輝く太陽を仰ぎ見なら『太陽が見えたら、たとえ離れ離れでも一緒にいるのと同じ』とつぶやく。そして、ソフィの小さな宝石のような父・カラムとの思い出を永遠に胸に残す小さな旅が終わる時間が迫る・・・。
父・カラムの優しい手触りの【アフターサン】の思い出を胸に残しながら、大好きな人との大切な記憶を綴るこの作品は、父・娘の胸の内を多く語らせない直截的描写をしながら淡々と見せていくのです。ソフィの11歳の思春期前期の少女の行動を中心に描く手法は、大切な思い出がセピア色に染まらないままに過ごしつつ、父・カラムと同じ年齢になったソフィの目と同化してみる人々に、ソフィ同様大切な思い出を脳裏に残らせる仕掛けとなるような演出となっているのではないかと思います。父と同じ年齢になったソフィの描写を、フラッシュバックのような短い描き方をしているのも、そのためかなと考えながら見ました。
ぼくのチケット代は、2300円出してもいい作品でした。
星印は、4ッさしあげます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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