フランスの名監督・フランソワ・オゾンの痛快なブラック・コメディです。
時は1930年代。女性の権利が皆無と言っていいフランス。有名な映画プロデューサーが自宅で殺され、新人女優・マドレーヌ(ナディア・テレスキウィッツ)が容疑者として連行される。マドレーヌは、プロデューサーの自宅に呼ばれ襲われ<自分の身を守るため撃った>と供述する。男ばかりの陪審員が待つ法廷に、男社会で珍しい駆け出しの女性弁護士で親友のポーリーヌ(レベッカ・マルデール)とともに法廷に立つマドレーヌ。新人ではあるがそこは女優のマドレーヌ。演じるのは得意。ポーリーヌと入念に打ち合わせして法廷に臨む。筋書通りに哀れな女性を演じるマドレーヌと共に、饒舌鋭く正当防衛を訴える鮮やかな弁論と感動的なスピーチをするポーリーヌの話術に、裁判官や陪審員だけでなく、新聞記者や大衆の心をつかみ無罪を勝ち取ったのみならず、マドレーヌは悲劇のヒロインとしてスターの座を手に入れる。ところが、そんなある日、ふたりの前にオデット(イザベル・ユペール)というサイレント時代の大女優が現れる。オデットはこの事件の真犯人は自分であり、ふたりが手にした富も名声も私のものだと言うのだ。こうして、女たちによる『犯人の座』をかけた駆け引きが始まるのだが・・・。
テンポのいい演出で、全編にわたって洒脱なユーモアとブラックジョークを満載したフランソワ・オゾン監督のこの作品は、フランス映画ならではの小粋でお洒落な内容にしながら、オブラートに包み込むように男社会への皮肉をチクチク刺してくるナンセンス・コメディになっているのだ!たぶんこの作品を見た方のほとんどが「見てよかった。これぞエンターテイナーと思う映画に出会った!」とニコニコしながら映画館を後にするでしょう。マドレーヌを演じるナディア・テレスキウィッツとポーリーヌ演じるレベッカ・マルデールの凸凹コンビの演技に惚れました。
ぼくのチケット代は、2500円出してもいい作品でした。
星印は、5ッさしあげます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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