映画監督作品として『ラヂオの時間』(97)でデビューし、映画ファンに人気の高い三谷幸喜監督の9作目の作品です。女優として円熟期を迎えた長澤まさみを主演にした、ミステリーコメディです。
豪邸に暮らしながら貧乏を謳う身勝手な老齢の詩人・寒川(坂東弥十郎)の新妻・スオミ(長澤まさみ)が行方不明となった。新任の部下である小磯(瀬戸康史)と共に、寒川の豪邸を密かに訪れたかなり神経質な刑事・草野(西島秀俊)はスオミの4番目の元夫であり、すぐでも捜査を開始すべしと主張するが、寒川は『大ごとにしたくない』とその提案を拒否する。やがて犯人と思われる人物から3億円を要求する電話がかかる。あわてる寒川・草野・小磯に、スオミの1番目の元夫であり元中学校教師で寒川の屋敷の庭師の魚山(遠藤憲一)。やがて屋敷に集まってくる、スオミの2番目の元夫で怪しげなユーチューバーの十勝(松坂桃李)や、草野の上司で情に脆いが外国人女性好きの警察官でスオミの3番目の元夫・宇賀神(小林隆)。加えて出版社の社員でありながら寒川の世話係の乙骨(戸塚純貴)に、神出鬼没な謎の女性・薊(宮澤エマ)も絡みテンヤワンヤの大騒動。彼らはスオミの安否そっちのけで、だれが一番スオミを愛していたか、誰が一番スオミに愛されていたかを熱く語る。だが不思議なことに、彼らの思い出の中のスオミは、見た目も、性格も、まるで別人。スオミはどこへ消えたのか。スオミとは一体、何者なのか・・・。
三谷幸喜監督のこの作品の狙いは、スオミ演じる長澤まさみが、男たちが好むタイプの5種類の異なる女性の演技を使い分けするのを、観客に楽しませることにあると思います。三谷幸喜監督独特の網の目を広げるようにして沢山の出演者を自在に動かしながら、最後は網の目をキュッと絞るラストに帰結する群像劇の魅力は、今回は長澤まさみの演技にばかり目が行く内容となっているのです。それを良しとするか否とするかは見る観客の判断次第でしょう。ぼくの評価は残念ながら否と思う作品でした。
ぼくのチケット代は、1900円出してもいい作品でした。
星印は、2ッ半さしあげます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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