『かもめ食堂』『彼らが本気で編むときは』の荻上直子監督が、堂本剛を主演にした奇想天外な内容の作品です。
美大を出たものの画家として成功できず、今はアーティストを気取る人気現代美術家(吉田鋼太郎)の流れ作業のアシスタントとして、言われることを淡々とこなす仕事をしている沢田(堂本剛)。そんな欲のない沢田を同じアシスタントの子(吉岡里帆)は、過激な心を持ち貧富の差に糾弾しながら鬼の形相で励ますが沢田は無視している。そんなある日、自転車通勤の沢田は鳥の大群に気を取られ雨の坂道で転んで右腕を負傷する。あっさりとクビになり、ボロアパートの部屋に帰ると一匹の蟻が床を這っており、その蟻に導かれるように無心で左腕で描いた〇(まる)の絵がSNSで拡散され、正体不明の天才画家【さわだ】としてSNS上の有名人となっているのだ。そんなことになっているのを知らない沢田は、コンビニでバイトしながら先輩のミャンマー人のモー君(森崎ウィン)からミャンマーの仏教の教えを受け、やさしい心根のモー君と仲良く慣れない仕事をする生活をしていた。その間もSNS上で謎の画家【さわだ】探しは世間の注目を浴び、社会現象を引き起こしマスコミまで【さわだ】探しに参加する。ボロアパートの隣人である、売れない漫画家・横山(綾野剛)は、売れない同士の沢田が【さわだ】と知り、嫉妬のあまり【さわだ】を名乗り〇(まる)の絵を描きまくる騒動を起こす。そんなことをつゆ知らない沢田は画廊にかけられた〇(まる)を見て画廊店主・若草萌子(小林聡美)を訪ねてナニゲに自分が【さわだ】だと名乗る。萌子は下にも置かない態度で沢田と契約する。知らぬ間に【さわだ】と言う超有名人になったことを知り、〇(まる)の絵を描く沢田だが、邪念に捕らわれ無心での〇(まる)の絵が描けない。そして沢田が取った態度と絵は・・・。
ほっこりとしたシュールな作品の荻上直子監督のデビュー作『バーバー吉野』を、シネマ5の田井さんが気に入り上映してからのファンの僕にとって、日常生活を淡々と撮り、シュールな描写を挟む技法の楽しさを感じる作品でした。
ぼくのチケット代は、2200円出してもいい作品でした。
星印は、3ッさしあげます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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