山田風太郎の伝奇小説『八犬伝』を、『鋼の錬金術師』の曽利文彦監督が役所広司を主演にして映画化した作品です。江戸時代化政期の読本の作家・滝沢馬琴が28年の時をかけて描き続けた『南総里見八犬伝』の創作過程の出来事を描く<実話パート>と、里見家の呪いとお家再興をかけて運命に引き寄せられる8人の剣士たちの戦いを描く創作上の<虚構パート>を交錯させながらの、変形2部構成の内容となっています。
人気読本作家・滝沢馬琴(役所広司)は、友人である浮世絵師・葛飾北斎(内野聖陽)に構想中の新作について語り始める。『南総里見八犬伝』というこの読本は、里見家の危機を八房という巨大犬が救い、里見家の姫・伏姫(土屋太鳳)を連れ去り、願いを込めた8つの珠を持つ8人の剣士が現れ里見家のお家を再興し助ける、という話だった。滝沢馬琴の心には、悪がはびこる時代だからこそ読本の中に勧善懲悪の話を書きたいと思っていたのだ。そんな馬琴を冷やかしながら北斎は、この長い読本に魅せられ、続きを聴くためたびたび馬琴のもとに訪れる。馬琴に創作上の刺激を受けた北斎は『富嶽三十六景』を完成させていく。渾身の気力で書き続けて28年の時を経て『南総里見八犬伝』は最終章に入る。八犬伝の勇者も出そろい、里見家に呪いをかけた玉梓(栗山千明)との最後の悪と善の戦いが始まるころ、滝沢馬琴の視力が失われ絶望的状況の中、亡き馬琴の息子・宗伯(磯村優斗)の妻・お路(黒木華)から筆写の手伝いを申しだされる。平仮名だけで漢字の書けないお路に苛立ちながら、見えぬ眼で漢字を教える馬琴。必死の努力で、漢字が書けるようになるお路の筆写で『南総里見八犬伝』はついに完成する。その姿を哀惜を込めたまなざしで眺める葛飾北斎の姿があった。
『嘘』と『実』を交錯させながら描いていくこの作品は、『実』に重きを置き、馬琴と北斎の奇妙な友情、お路との切ない嫁舅の心の交流を描いていくのです。『嘘』の創作上の『八犬伝』の描写は、派手なCGで雄壮に描いていくのです。
ぼくのチケット代は、2200円出してもいい作品でした。
星印は、3ッさしあげます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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