筒井康隆の同名小説を、吉田大八監督が映画化した作品です。2024年・第37回東京国際映画祭コンペティション部門で、【最優秀作品賞】【最優秀監督賞】【最優秀男優賞】を獲得した作品です。
主人公の渡辺儀助(長塚京三)は77歳になる、高名なフランス文学専門の元・大学教授。妻の信子(黒沢あすか)から先立たれ、子供のない天涯孤独な生活を祖父の代から続く日本家屋でひとり暮らしている。毎朝決まった時間に起床し、料理は自分で作り、年金や講演や執筆の僅かな収入で暮らしながら、自身が後何年生きていかれるか計算しつつ生きていた。だが、決して孤独ではなく、大学勤務からの付き合いのある出版業界の友人と酒を酌み交わし、彼を高潔な人として尊敬してきた教え子の鷹司靖子(瀧内公美)を招いてディナーしながらワインに酔う靖子の放恣な姿に、年老いても消え去らない煩悩の心を抱いたりしていた。その気持ちを持ちつつ、行きつけのバーでバイトしながら他大学でフランス文学を学ぶ、菅井歩美(河合優実)との知的会話で胸をときめかした儀助は、実家の家計で中退するかもしれないと聞かされて、歩美に衝動的に計算外の大金を貸してしまう。そんなある日、パソコンに『敵が来た!』という謎のメッセージが入る。心かき乱される儀助に、現実では有り得ない妻・信子が現れ、儀助のやましい心をなじる。その日以来、日常の生活を壊し、煩悩の世界で悩む儀助に妄想とは思えない出来事が起こるが・・・?。
軽妙な笑いを醸し出してシュールな世界に誘うこの作品は、儀助と同じぐらいの年頃に入った僕には身につまされ見てしまう内容であった。いくつになっても、煩悩の世界から逃れられない男の心の哀れさを活写していくが、ラストのシュールな描写は見る人の様々な解釈に任せてしまっているのだ!!まだ若い吉田大八監督にとって、想像の世界を描いた作品だと思うが、この年頃の人にとってかなり辛い心を抱えて見る内容となっていたのだ!
ぼくのチケット代は、2300円出してもいい作品でした。
星印は、4ッさしあげます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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