日本人の【心の矜持】をテーマにして描き続ける小泉堯史監督が、吉村昭の同名小説を映画化した作品です。江戸時代末期に実在した福井藩の町医者・笠原良策が、不治の病【疱瘡（天然痘）】と言われ恐れられた病に立ち向かう物語です。

江戸時代末期。越前・福井藩（藩主・松平春嶽）の農村で、患えば死ぬと恐れられている【疱瘡】が猛威を振るっていた。漢方医である町医者・笠原良策（松坂桃李）は、手当の術も無く重病患者を誰もいない山に隔離するしか方法が無い自分に無力感を抱いていた。自らの技術を責め、落ち込む良策を、妻の千穂（芳根京子）は明るく励まし続ける。そんなある日、嫌っていた蘭方医の町医者・大武了玄（吉岡秀隆）から西洋の治療で【種痘】の話を聞く。良策は漢方医と蘭方医の確執の垣根を超え、了玄の紹介で京都の蘭方医・日野鼎哉（役所広司）の教えを乞おうと福井から京都に旅立つ。日野鼎哉から、疱瘡に患った【牛の膿】から採集する【種痘】というジェンナーが考案した【予防接種】の方法を教えられるが、そのためには【種痘の苗】を海外から取り寄せる必要があり、江戸幕府の許可が絶対条件と知らされる。あきらめきれない良策は、親しい福井藩・藩医の半井元沖（三浦貴大）を通して、藩主・松平春嶽から幕府の許可を乞い願う嘆願書を提出する。下から上への不敬罪を伴う恐れのある願いだが、良策は自分の命を懸けての嘆願だった。そして・・・。

医者としての己の矜持を懸け、町医者の身分で命を懸けて江戸幕府に嘆願書を書くまでの流れを描いていくこの作品は、雪深い越前の景色の美しさと荒れ狂う風景を織り交ぜながら、庶民の命を救うために命を懸ける町医者と、その崇高な志に協力する武士や庶民の決死の行動力のすごさに胸が打たれるのです！！静的な動きが多い内容ですが、小泉堯史監督は見る人へのサービスとして、良策の武芸の腕と“男乃助”と謳われた男並みの武芸や太鼓をたたく千穂のアクション・シーンを見せてくれるのです。

ぼくのチケット代は、２３００円出してもいい作品でした。

星印は、４ッさしあげます。