『ソーシャル・ネットワーク』の演技で俳優として名を揚げたジェシー・アイゼンバーグの、監督・脚本・主演のロード・ムービーな作品です。
ニューヨークに住むユダヤ系アメリカ人のデヴィッド(ジェシー・アイゼンバーグ)は、幼い頃から兄弟のように育ったイトコのベンジー(キーラン・カルキン)と、最愛の祖母が愛した母国のポーランドを旅するツアー旅行に参加する。デヴィッドもベンジーも、【ホロコースト】など知識でしか知らないアメリカ生まれのポーランド系ユダヤ人だった。中年に差しかかる年頃のふたりは、真反対の性格ながらお互いが好きだった。現地をツアーする案内人は生粋のイギリス人で、ポーランドに住み【ホロコースト】を研究している人だった。4組のツアー参加者は、宿泊するホテルで自己紹介をする。その中にはアフリカのルワンダ人だと自己紹介をする青年がいた。ルワンダはベルギーより独立したがフツ族とツチ族の内乱で、80万人のフツ族が虐殺された暗い過去を持つ国で、この青年はフツ族だったのだ。ユダヤ人の参加者は、デヴィッドとベンジーと、無口で温厚な老夫婦と、ひとりで参加した華やかな雰囲気を漂わせる中年婦人だった。ツアーガイドのイギリス人の案内で、現在はきれいに整備されたポーランドの各地にある【ホロコースト】痕跡のある場所を旅していく。真面目なデヴィッドは、真反対で奇矯なふるまいをするベンジーが各地で問題のある行動を起こす事に頭を抱える。しかし、その奇矯な行動や態度の奥にある悲しく寂しい心根への、ツアー参加者への共通認識の『リアル・ペイン』とは・・・。
ポーランドの目を見張るような美しい景色を見ながら旅する、ツアーガイドや参加者たちの心にある『リアル・ペイン』を静かに描いていくこの作品は、【ホロコースト】を弾劾せずに、遠い過去の出来事を喉に刺さった小さな小骨を抱えて生きる現代人の心の悲しみを描いていくのです。淡々と描くロードムービーであるからこそ、人間の心の残酷さを強烈に感じるのです!!
ぼくのチケット代は、2300円出してもいい作品でした。
星印は、4ッさしあげます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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