二次大戦中にナチスの迫害を逃れて、アメリカへ移住したユダヤ系ハンガリー人の高名なバウハウス建築士の軌跡を追う物語です。ブラディ・コーベット監督は、この一人の敬虔なユダヤ教を信じる男の話を、3時間を超える壮大で骨太な叙情詩のように描いていくのです。主演を演じるエイドリアン・ブロディは、この作品で『戦場のピアニスト』以来2回目のアカデミー主演男優賞を受賞しました。
ハンガリー系ユダヤ人のバウハウスの高名な建築士であるラースロー・トート(エイドリアン・ブロディ)は、ナチスのユダヤ人への迫害を逃れて従兄弟を頼りアメリカに移住した。ペンシルベニアの田舎に、従兄弟が経営する平凡な家具店で日雇い同然の暮らしをしていたが、ある日ペンシルベニアの大富豪のハリソン家の息子から家の内装を頼まれ、バウハウス様式の【ブルータリスト】様式の無駄を省く簡素なデザインの内装を作るが、家に戻った当主のハリソンを激怒させる。得意先の大事な客を怒らせ、従兄弟から馘首されたラースローは路頭に迷う。しかし、知性的なハリソンは、ラースローがヨーロッパで高名なバウハウスの建築士だと知ると、手のひらを返し、ヨーロッパに残されたラースローの妻・エルベージェト(フェリシティ・ジョーンズ)と姪のアメリカ移住の約束と引き換えに、膨大な土地の中にあらゆる設備を備えたキリスト教の【礼拝堂】の設計と建築を依頼した。ハリソンの約束通りアメリカに移住できたエルベージェトは、ナチスの迫害による骨の脆い症状で車いすの生活を余儀なくされているが、聡明で知性的な妻は下手な英語しか使えないラースローの通訳を務めてラースローを助ける。下手な英語のせいで、ハリソン家から下等人種差別されるラースローにエルベージェトの怒りが蓄積し、あるおぞましい出来事で怒りを爆発させる。しかし、母国とは言葉も文化もルールも異なるアメリカでの設計作業は、多くの困難が山積しながらラースローは挫けないが・・・。
途中で15分の休憩時間を持つ長大なこの作品は、アメリカンドリームの自由なアメリカの裏側を剥ぎながら、一人の男の“魂の尊厳”を活写していくのだ!!様々な人間や宗教が数多くいるアメリカの中で、建国の背骨を支えるピューリタン精神中心の【芯】を感じながら見たのだ。すべての宗教に寛大な日本人にとって分かりづらい内容だが、厳然と魂の中心にある帰依する宗教への畏怖を感じるのだ。
ぼくのチケット代は、2400円出してもいい作品でした。
星印は、4ッ半さしあげます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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