熊本県の山鹿市を舞台に、愛する妻を亡くして生きる気力をなくした男が、和紙と糊だけで作られる山鹿の伝統工芸品である『山鹿灯籠』(別名【骨なし灯籠】)の世界に出会い、山鹿の人々や自然との触れ合いを通して、心の再生までを描く作品です。
元・美術教師の市井祐介(水津聡)は、亡き妻・ゆかり(まひろ玲希)の骨壺を抱え、死に場所を求めてふらふらとさまよい、古き時代のたたずまいを濃厚に残す、熊本豊前街道の温泉町・山鹿にたどり着く。町には盆休みに行われる『山鹿灯籠まつり』の日本風なポスターが町のそこかしこに貼られており、そこに描かれた『灯籠娘』に、妻の面影を感じる祐介。このポスターに魅かれた祐介は、山鹿にねぐらを求めて町の人の親切で住み着く。元・美術教師の腕を認められた祐介は、人のいい灯籠師見習いの直樹(高山陽平)に誘われて山鹿で働き始める。だが、一年が過ぎ、ゆかりの三回忌を迎えても、祐介の心の中の喪失感と孤独感は無くならない。ゆかりの想い出だけ胸に抱えて、山鹿を出ていこうと決めた≪山鹿灯籠まつり≫の日、祐介の前にゆかりの双子の妹だと言う、あかり(まひろ玲希)というスペインから戻った女性が現れる。幼いころにゆかりと別れたと言うあかりは、姉のゆかりの性格や人柄の事を祐介に詳しく聞く。あかりに夢中にゆかりの話しをする祐介だが・・・。
倉本聰の主宰する【富良野塾】で腕を磨いた木庭撫子監督のデビュー作のこの作品は、『山鹿灯籠』(『骨なし灯籠』すべてが薄い紙だけで作られている灯籠)盆踊りの幻想的な雰囲気をマッチングさせるような初々しい幻想的な作品になっているのです。限られた予算の中で作られた地方発の地方映画として、木庭監督が努力したのがテーマと骨なし灯籠とをマッチさせる、後半の幻想的内容になっているのです。日本には『阿波踊り』などの激しい動きと鳴り物魅了する盆踊りもあるが、『風の盆』踊りや大分県の『鶴崎踊り』などの動的ではなく静謐な幻想的盆踊りの中で、特に『山鹿灯籠』踊りは、このタイプの抜きんでた幻想的踊りなのです。それに合わせようと努力した木庭撫子監督の幻想的内容の作品なのです。
ぼくのチケット代は、2200円出してもいい作品でした。
星印は、3ッ半さしあげます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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