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見はらし世代

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   2025/10/21

衛藤賢史のシネマ教室

今年(第78回)カンヌ国際映画祭の監督週間に26歳で選出された団塚唯我監督の、オリジナル脚本で監督をした長編デビュー作品です。

再開発の進む渋谷で、胡蝶蘭の配送運転手として働いている20代の蓮(黒崎煌我)は、幼い頃に母・由美子(井川遥)を亡くした事をきっかけに、ランドスケープデザイナーである父・初(遠藤憲一)と疎遠な仲になっていた。そんなある日、代官山の会社に胡蝶蘭を配達して偶然父と出会う。父の初は海外から帰り、ランドスケープデザイナーとして起業して会社を興していたのだ。その事を、4つ年上の姉・恵美(木竜麻生)に話すが、恵美は自分たちを捨てたと思う父に関心が無いと蓮に告げる。母を失って以来、姉弟と父は遠い関係になっていたのだ。母が亡くなる前に、母に何気に言った自分の一言が、父と母を別れさせたと思う蓮は、もう一度、家族の距離を測り直そうとする。変わりゆく渋谷の街並みの、ホームレスなどが住む猥雑だが郷愁を誘う街並みを、【見はらし】のいい近代型複合サービスの公園にデザインした父の街並みを見つめながら、家族とって、最後の一夜が始まるが、そこに或る奇跡が起こる・・・。

刻一刻と変化する東京に住む若者たちの生き方を描くこの作品は、ドラマチックな描きはせずに、軽やかの中に若者の淡い疎外感を描いていくのだ。具象的な演出で、抽象的なペーストが挟まれる新感覚の作品になっているのだ。『ブギウギ』でデビューした黒崎煌我の顔に似合わない低音の声が心に残るのだ。彼は使い方によっては新しい星に成るかも。

ぼくのチケット代は、2200円出してもいい作品でした。

星印は、3ッ半さしあげます。

5点満点中3.5点 2200円

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