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おーい、応為

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   2025/10/28

衛藤賢史のシネマ教室

葛飾北斎の娘で弟子でもあったお栄(葛飾応為)と北斎の人生を、飯島虚心の『葛飾北斎伝』と杉浦日向子の『百日紅』を原作に、大森立嗣が監督・脚本した作品です。

葛飾北斎(1760~1849)の娘・お栄(長澤まさみ)は、21歳の時は嫁いだ先の絵師の動きの無い絵を見下したことで口げんかし、『こっちからとっとと出て行ってやらあ』と自分から離縁し北斎(永瀬正敏)のもとに戻る。それ以来、お栄は北斎の身の回りの世話をしながら父娘として、師弟として、北斎と生涯をともにすることになる。二人が暮らす貧乏長屋は、画材や絵で散らかり放題。茶も入れられずに針仕事も出来ない不精なお栄は、絵の才能は父親譲りの才能を持っていた。お栄のように不精な北斎は、お栄に『おーい、筆!』『おーい、飯』と命令することから【葛飾応為(おうい)】という北斎らしい諧謔味の有る号を授ける。いつも着流し姿で男のように街を闊歩するお栄だが、北斎の弟子のおおらかな気質の美人画で名を馳せる絵師の渓斉英泉(髙橋海人)通名・善次郎との友情や、兄弟子の初五郎への淡い恋心、そして愛犬さくらとの日常を愛していた。北斎が富士山シリーズの絵だけを描く頃に、北斎と暮らすお栄は、何かあるとすぐに引越しを繰り返す北斎に文句を言いながらついていく。その合間に描くお栄(葛飾応為)の作品は『吉原格子先之図』(太田記念美術館蔵)『夜桜美人図』(メナード美術館蔵)のような西洋画の【光と影】を操る独特の画法を描いている。1849年、90歳の4月18日に北斎は肉筆画『富士越龍』を遺作に没する。北斎についていったお栄はその後行方知れずになる・・・。

富士山に取り憑かれるように富士山の絵を描き続ける北斎の画業の時期を焦点に、娘のお栄(葛飾応為)と北斎の生活を描くこの作品は、お栄の目から見る北斎の姿を描きながら、北斎の才能を受け継いだ葛飾応為の奔放な女としての天才の姿を、大森立嗣監督が等身大に描いていくのだ。天才と天才のぶつかり合いを描きながら、お栄の女に生まれた天才の悲しみや、父娘の愛情を詰め込み、大森立嗣監督がユーモアと哀愁のある描写の作品に仕上げている。この作品は、長澤まさみの代表作になるだろうと思う!!

ぼくのチケット代は、2300円出してもいい作品でした。

星印は、4ッさしあげます。

5点満点中4点 2300円

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