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平場の月

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   2025/11/18

衛藤賢史のシネマ教室

山本周五郎賞を受賞した朝倉かすみの、中年に差し掛かった男女の友情と恋を描いた同名小説を、『花束みたいな恋をした』の土井裕泰監督が映画化した作品です。

妻と別れて、地元に戻った青砥健将(堺雅人)は再就職した印刷会社で一人暮らしをしながら平穏な毎日を送っていた。会社に自転車通勤する青砥は、会社の定期診断で引っ掛かり、通う病院の売店で中学時代に淡い恋心を寄せていた同級生の女の子・須藤葉子(井川遥)に出会う。葉子は夫と死別し、子供のないままに売店のパートで生計を立てていたのだ。高卒で就職した青砥は、大学に進学した葉子と疎遠の仲だったのだ。共に独り身となり、さまざまな人生経験を積んできた青砥と葉子は中学時代の思い出を語りながら、中学生以来の時間を静かに埋めていき、大衆食堂のオヤジ(塩見三省)の厚意に甘えいつも同じ席で酒を飲みあう仲になる。帰る途中、自転車の二人乗りをしようと言う青砥に、葉子は『それはあまりにも青春』と恥ずかしそうに断るほどの、胸の中にいつの間にか惹かれ合う親しい仲になっていく。そんな仲を中学時代からの悪友に知られて、陸上部の葉子(一色香澄)に憧れ『僕とつき合ってください』と交際を求め一刀両断で断られた同級生(大森南朋)の中学時代の思い出を楽しく語り合う。だがその後に、青砥も同じように葉子に交際をピシャリと断られていたのだ。実は青砥は、葉子の悲しい家庭事情を知っての憧れだったのだ。やがて、悪友たちからの好意の中で、青砥と葉子は互いに50代に入る中年の入り口のふたりの未来について話すようになるのだが・・・。

中学時代の回想シーンを盛り込みながら、中年の入り口に入るふたりの男女の【愛】を淡々と描くこの作品は、ドラマティックなシーンは極力避けユーモアを挟み、日常生活のディティールを繊細に描いていくのです。クライマックスのシーンは、映画を見て下さいとしか言えないのですが、淡々とした描写で中学時代の青砥と葉子の自転車の二人乗りのシーンに深い余韻を残すでしょう!!

ぼくのチケット代は、2300円出してもいい作品でした。

星印は、3ッ半さしあげます。

5点満点中3.5点 2300円

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