トム・ミッシェルの回顧録『人生を変えてくれたペンギン 海辺で君を見つけた日』を、ピーター・カッタネオが映画化した作品です。
1976年、軍事政権下のアルゼンチン。中年のイギリス人のトム(スティーブ・クーガン)は、英語教師としてアルゼンチンの名門私立寄宿学校に赴任していた。人生に希望を見いだせないでシニカルで虚無的なトムは、投げやりな授業をしている。軍事政権下のそれを追随している、政権寄りの金持ちの息子ばかりを入学させているので、特権階級を鼻にかける生徒から、バカにされても構わない自堕落な生活を送っていた。トムを推薦してくれた校長先生(ジョナサン・プライス)の助言も無視するトム。そんなトムをハラハラしながら見ている、下働きの下層階級のおばあさんと孫の娘。そんな中、政権の都合で休校になった日、トムは隣の国へ旅行した。旅先で出会った女性をナンパする気持ちで、海岸で重油まみれの瀕死のペンギンの子供を救う。しかし女性に振られ、残されたのはペンギンだけ、海に戻そうとしても不思議とトムの元に戻って来る。税関の役人からも『あなたを慕っているので一緒に連れて帰りなさい』と無責任に言われ、トムは仕方なくペンギンを寄宿学校へ連れて帰る羽目となった。トムはペンギンを<サルバトール>と名付け自分の部屋で隠して育てる。下働きの祖母と孫娘も黙って協力してくれるが<サルバトール>は授業までついてきて、ワルガキの生徒たちの人気者になり、トムの授業はスムーズに進みはじめていく。そんな中、孫娘がトムの見ている前で秘密警察から拉致されるが、恐怖に固まるトムは黙って見ているだけ。自分の不甲斐なさにトムの心は目覚める。校長先生の協力もあり、トムは嘆願運動をするが・・・。
異国で心が目覚めるとトムと、ペンギンとの心の交流を描くこの作品は、見ている人の心までほのぼのさせてくれるのです。本物のペンギンの可愛い無垢な仕草をニコニコしながら見て、人間の対立の悲しさが胸に迫る内容となっているのです。
ぼくのチケット代は、2400円出してもいい作品でした。
星印は、4ッさしあげます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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