1996年に第1作がスタートして、シリーズ物としては5作目に当たるこの「ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション」で19年目。普通これだけ長い間つづくシリーズ物は、次第に内容が雑になっていくものだが、面白いことに「M:i」シリーズは回を重ねるごとに物語が魅力的になっていくのだ。それは、主役のイーサン・ハント(T・クルーズ)と彼を支える脇役、そして敵役とのバランスがより巧みになっていくことに原因がある。娯楽映画はこのトライアングルの配置がいい場合、より楽しい内容となるということを、このシリーズは学習している。そして今回の作品は、このバランスがより進化しているので、よりスリリングでハラハラドキドキの痛快な内容となっている。もちろんT・クルーズの体を張ってのアクションもすばらしいと思う作品だ。
今回の内容は、世界中の凄腕のエリート諜報部員が結成したスパイ・シンジケート組織によって各地で防ぎようのないテロが勃発する。アメリカのCIA長官はイーサン・ハントが出没する地で、その事件が起こることから彼の仕業と見て、ハントの所属する秘密組織IMFを解体しようと図る。組織の後ろ盾を失う危機に直面しながら単独でもこの謎の組織を追求しようとするハントに、仲間たちはCIA長官の裏をかきながら協力する。だがまったく正体がわからない謎のシンジケート。この組織のボスがどこの誰かさえ突き止めれば壊滅できると考えたハントは、わずかな情報を頼りに、ロンドン、ウィーン、カサブランカと世界中を駆け巡る。しかし、高度なトレーニングを受けている敵の組織は執拗にハントを襲ってくる。そんな中、凄まじい殺しのテクニックを持つ敵方女性スパイのイルサと遭遇したハントは、この不可思議な態度を有するイルサを線として、この謎の組織のボスへと迫っていくのだが・・・・・。
予告編にある、飛び立つ飛行機にぶら下がるT・クルーズの命知らずなアクション・シーンが、「えっ、ここであるの!」とほとんどの人が思う大胆な使い方に代表されるように、カーチェイス、超高速なオートバイ走行など、本来このタイプの映画ではクライマックスあたりで売りのシーンとして出すのが普通のはずなのに、平然とそれを売りにしない演出は斬新であり、それによってかえって進行するスリリングな内容つまりドラマの面白さに集中できる優れた手法となっている。
とにかく一瞬も目を離せない上質なエンタテイメントとなっているのだ。ぜひご覧あれ!
女性スパイを演じるR・ファーガソンの見事な体技と美貌にご注目でもあるのだ!
ぼくのチケット代は、2,400円出してもいい作品でした。
星印は、4つ差し上げます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
©2024 Oita Broadcasting System, Inc. All Rights Reserved.