1995年に公開されコアなファンから圧倒的支持を受けた石井監督のバイオレンス映画『GONIN』が、同監督の脚本・監督で20年ぶりに戻ってきた。
今回は、続編と言っても19年を経過して、その子供たちが情念をたぎらして亡くなった親たちへの復讐を企てるという設定となっており、現在のフレッシュな若手俳優たちを起用しての壮絶なバイオレンス作品に仕上げている。
バブルが崩壊し、多額の借金したオーナーや会社をリストラされ社会からはじき飛ばされた5人の男たちが、生き残りを賭けて暴力団大槻組を襲い金庫から大金を強奪した。しかし怒りに燃える大槻組は面子にかけて彼らに凄惨な報復をするが、多数の死傷者を出してしまう事件から19年が過ぎた。
あの事件で潰れた大槻組の組長の息子・大槻大輔は大槻組の上部団体五誠会で、冷酷な三代目式根誠司の走り使いに甘んじながら大槻組の再興をうかがっていた。銃撃戦で死亡した大槻組の若頭の息子・久松勇人は大輔と親友だがヤクザの世界から距離を置くやさしい性格の青年に育っていた。しかし勇人の母安恵は、あの事件で夫である久松が大槻組長の命を守れなかったと蔑む五誠会の態度に腹を立てて組織を執拗にののしったために自殺に見せかけて殺されてしまう。母思いの勇人の理性は崩壊し五誠会への復讐の気持ちが燃え上がる。安恵の心を焚き付ける原因となったルポライターを称する富田もあの事件に暗いわだかまりがあった。事件当時のアイドルでは今は五誠会の囲い者になっている麻美と、あの事件襲撃側の元刑事の氷頭の5人は、傍若無人な五誠会のふるまいにそれぞれの思いは違いながら結託し、反逆を企てるが…。
劇画家としてデビューし、自身の作品『天使のはらわた』(1977)で映画監督としての力量を発揮し人気監督としての地位を確立した石井監督は終始、情念の煮えたぎって内容と血潮・スコールのような雨・ファイドアウトの多様などシュールな画面構成などを特徴とする作家である。
今回もその描写が全編を覆うぶれない演出となってくるが、いかんせん20年前の作品の続編となると、観客は内容についていくのが必至となり、その演出の醍醐味に酔うまで至らなかった。さらに東出昌大の演技がまだ素人の域を出ないので凄味が足りず、監督の期待に応えるには荷が重かった。残念だが空回りした内容になった作品となった。ぼくのチケット代は、1,700円ぐらいかなと思う作品でした。
星印は、2つ半差し上げます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
©2024 Oita Broadcasting System, Inc. All Rights Reserved.