『カーズ』(2006)『塔の上のラプンツェル』(2010)などのアニメーションで大ヒット・メーカーの脚本家として売り出したD・フォーゲルマンの初監督作品。
イギリスのフォークミュージック界の大歌手スティーヴ・ティルストンが新人の頃の1971年にマイナーな音楽雑誌でのインタビュー記事を受けた。その記事を読んだジョン・レノンの手紙が、2005年にある収集家からティルストンに連絡が入り、その手紙のことを全く知らなかった彼が感動したというエピソードを、D・フェーゲルマンがオリジナル脚本化し、はじめて監督をした作品である。
ロック界の大スターであるダニー・コリンズは、もう40年以上も知名度の高いロック歌手として生活している。がファンはダニーの鮮烈なデビュー当時からの人たちが中心であり、年齢もダニー同様に高齢化している。実はダニーはもう30年近く新曲はなくデビュー当時の大ヒット曲で暮らしていたのだ。そんな時、ダニーの誕生日のお祝いとして、大親友でもあるマネージャーのフランクが一通の手紙を額に入れてサプライズ・プレゼントする。それは、ダニーがデビュー当時、ある音楽雑誌のインタビューで述べた記事に、何とダニーが心から尊敬していたジョン・レノンからのやさしい励ましの直筆の手紙だったのだ。手紙はその音楽雑誌宛へと届いたため、30年以上もその手紙の存在を知らなかったダニーは、安直に流れて自堕落な生活を送っていた自分を恥じた。
そしてオールドファンに寄りかかった生活を止め心機一転するつもりで、ツアー・コンサートをキャンセルし地方のホテルに宿泊しながら新曲を構想しようとする。その場所は、もう長いこと断絶していた息子夫婦の住む場所だった。滞在先ホテルのマネージャーのメアリーは、ウィットに富む魅力的な中年女性であり、有名人だからと言って媚びない性格を気に入ったダニーの気持ちはフレッシュとなり、新曲への構想も進む。しかし、息子はかたくなにダニーの気持ちを拒否する。何とか息子夫婦と孫娘と仲良くしたいダニーだが悪戦苦闘。そんななか息子トニーが難病を患っていることを知ったダニーはある決心をするのだった。
アル・パチーノの演技と唄(?)が冴えるハートフルな作品であるが、ずらりと並ぶ演技俳優の好演もあってベターな話にならず、台詞の掛け合いの絶妙なユーモア感あふれる娯楽映画となっていました。また劇中にジョン・レノンの唄が何曲も流れ、ファンにとって至福の気持ちを味わえる作品でもあります。
ぼくのチケット代は、2,200円出してもいい作品でした。
星印は4つ差し上げます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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