アカデミー主演女優賞を2回(「ボーイズ・ドント・クライ」1990年/「ミリオン・ダラー・ベイビー」2004年)獲得したヒラリー・スワンクが、ALS(筋萎縮性側索硬化症)という難病を患う女性を演じた作品。その介護人に「オペラ座の怪人」(2004年)でヒロインのクリスティーヌ役を演じたエミー・ロッサムが挑戦し、ヒラリー・スワンクと真逆のキャラクターを迫力ある演技で演じている。
セレブな生活をしているケイトは結婚15年目の35歳の年、身体の異常を感じる。自分の誕生パーティでセレブな仲間の前でピアノを弾いた時、手に力が入らず失敗してしまったのだ。やがて症状は全身に及び、診断の結果ALSの発症と告知された。この病気は、筋力の衰えが四肢に及び、やがて会話、嚥下能力が喪失し呼吸不全へとつながりながら、知能、知覚だけは正常に働く、という難病であり、平均余命は2年から5年と言われている。発症から1年後の36歳、ヒラリーは歩行器と車椅子の生活になっていた。弁護士の夫エヴァンと介護人の助けなくしては着替え、トイレ、化粧などできない体となったヒラリー。知的で聡明で家事のすべてを取り仕切っていたヒラリーには屈辱の生活。ある日、夫の反対を押し切って介護人を馘首し、応募に応じてきた大学生ベックを採用する。それは自分を患者でなく友人として扱ってくれる人材としてベックを求めたのだが、ミュージシャンを希望するベックは家事ができないうえに、スラング連発の言葉遣い、私生活もでたらめという介護人としては最低の大学生だった。
真逆の性格のふたりであったが、行動も心も雑なベックの未来が見えない鬱屈とした気持ちの底に眠っている愛に飢えた精神を理解しはじめたヒラリーとの間に、本音でぶつかり合える奇妙な友情が芽生えはじめる。
そしてヒラリーとベックで見つけたセレブな階級と違う仲間たちとの飾らないつき合いを通して、今を生きているという実感を覚えるヒラリーだったが、ベックの願いをよそにヒラリーの症状は刻一刻深刻さを増しはじめる・・・。
知的意識は冴えわたりながら、体が動かなくなるALSの残酷な症状にひたすら耐えつづけるヒラリーの神を頼らぬ自己救済の意識と、刹那的破壊的生活に身を堕としながら愛を乞う他動的救済の意識が交錯する時、両者の魂の神は輝くのだ!
チケット代は、2,100円出してもいい作品でした。
星印は、3つ差し上げます。
“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。
星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)
【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動
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